FLYING

〈全日本・紀文豆乳飲料シリーズ「麦芽コーヒー」の500ミリリットルパックを扱う小売店が少ないことに遺憾の意を表明する会〉活動記録

Aina Kusuda Q&A メモ書き起こし - ANIME MATSURI 2019

目次

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会場の GRB Convention Center Entrance

金曜14時からのセッションには Superpass *1 、一般の客も含め100人程度?が参加。 ラブライブ!キャラの寝そべりぬいぐるみやグッズなどを持ち込んでいるファンがちらほら。 始まる前から現地のファンが Light Sticks *2 を振って盛り上がっていると、スタッフから注意事項が。

曰く、

No video, photograph and recording.

But light sticks are approved!

ここで一層ファンが Fu〜〜!! と盛り上がり、スタッフさんの Ready? 的な掛け声とともに楠田さんと通訳の方が登場。

以降、メモから書き起こした内容になります。 なるべく雰囲気を伝えられるように書いていますが、意訳・省略されている部分もあるため間違いもあるかもしれません。ご注意ください。 また、筆者が勝手にいい話だと思った部分を強調表示しています。

導入

最初に本人が英語で挨拶。

楠田さん「Nice to meet you! My name is Kusuda Aina. Thank you.」

そのまま Q&A に移行。通訳がまず英語で Question を説明し、その後日本語でも説明。 それに対する楠田さんの日本語での Answer を、再度通訳さんが英語に翻訳するという流れ。 まずは、通訳さんが資料を見ながら Question を投げかけていく。

通訳さん「ヒューストンにはいつ来られたんですか? ヒューストンはどうですか?」

楠「昨日来ました。……そうですね、タコスを食べました。」

楠「イベントが決まってからヒューストンを Google Maps で検索して、ここがヒューストンか、と。」

通「世界中のファンがこうやって応援しているのを見てどう思いますか?」

楠「嬉しいです。…… (ここで言葉に詰まって笑う) 海外でイベントをしないと、なかなか海外のファンと会うこともできないので、実感はなかなかないけど……嬉しいです。」

声優になったきっかけと趣味

通「アニメ業界は小さい頃からの夢?」

楠「16才の頃から声優になりたいと思い始めて、専門学校に通いました。それまでは、小さい頃は、ダンサーになりたかった。バレエとかやっていたので、ダンサーになるんだろうなと思っていました。」

通「歌手と声優を両立するのは忙しいと思うが、暇のあるときは何をしている?」

楠「休みの日に漫画を読んでます。あとゲームもします。だいたい家にいます。寝てます。

通「踊ったりはする?」

楠「仕事ではやる。けど趣味ではやらないです。家の中でたまに踊りだしたりするくらい。」

キャラクターへの思い入れ

通「ラブライブ!東條希の役が有名ですが、こんなに人気になると思いましたか? キャリアにどんな影響がありましたか?」

楠「そもそも、ラブライブ!という作品がこんなに人気になるとは思いませんでした。最初はファンが少なくて、ラブライブ!ってなんだよ、みたいなことも言われたりして。続けていく内にだんだんファンの人が増えていって、海外の人のファンも増えていくのを感じました。」

楠「ラブライブ!で2枚目のシングルをリリースしたとき、フランスの人が踊ってみたの動画を投稿しているのを見て、海外にもアニメが好きな人がこんなにいるんだと思いました。嬉しかった。」

通「どうしてラブライブ!をやろうと思ったのか?」

楠「オーディションで決まったので、わたしに決めたのはスタッフさんだと思います (笑) 。」

通「キャラがこうやって愛されているのを見てどう思いますか?」

楠「本当に嬉しいです。どの作品のキャラクターも1人1人大切に思っているので、それを好きって言ってもらえることは、自分自身を好きって言ってもらえているようでもあって。キャラクターが好きでグッズを買うとか、熱意がないとできないと思うんです。だから、キャラクターと出会ってくれてありがとう、って気持ちです。

役作りや CV 以外のお仕事

通「声を担当するとき、声以外だとどんなことを注意しますか?」

楠「役作りみたいなことですかね?」

通「そうです!」

楠「いちばん考えることは、どうすればそのキャラクターがいちばん魅力的に見えるかということ。これまでに演じたキャラクターとはお友達という気持ちがあって、その友達とどれだけ仲良くなれるか、という気持ちで向き合っています。

通「歌や踊りなどのスキルがどう声優の仕事に関係してきますか?」

楠「歌もダンスもお芝居も、すべてが繋がっていると思っています。役に立たないということはないなと。」

通「様々な形で表現をするのは難しくないか?」

楠「表現の方法は異なるけれども、根本は一緒。技術面のこともあるが、基本は一緒だと思っています。」

通「役作りのトレーニングや、普段から心がけていることは?」

楠「趣味みたいなものだけど、漫画や本を音読したりしています。部屋でひとりでやっています。」

やりたいキャラクター

通「漫画を読んでいてやってみたいと思うキャラクターは?」

楠「たくさんあります!……最近だと HUNTERxHUNTER を読み直しているので、アニメのオリジナルのキャストさんはうまいな、と思いながら読んだりしています。」

通「いちばん難しかった役は?」

楠「どのキャラクターも難しかったです。ただ、ラブライブ!東條希はデビュー作で、初めて声を当てたキャラクターなので、難しかったし悩むことも多かったです。途中から人気が出て知ってもらったがために、自分のキャラクターのイメージと違うという声もたくさんあって。今はしっかり自分の中でのキャラクターのイメージができあがっているが、当時は悩むこともありました。

通「若いキャラが多いが、演じてみたいキャラクターの種類は?」

楠「声優をやりたいと思ったのはドラマなどと違って人間以外になれるから。最近は 2.5 次元の舞台などもあるけど、アニメは絵があるのでビジュアルが必要ないというのがあると思います。人間以外や、自分とかけ離れたキャラクターを演じられるのが良いところだし、そういうキャラクターをやってみたいです。

楠「最近だとウィル・スミスさんがアラジンの魔神をやっていましたね。 (笑。ここで会場も結構ウケる) 」

通「ゴジラは? *3

楠「そういう役がいただけるなら、もちろん。」

歌うときのイメージ

通「歌うときのルーティンはなにかある?」

楠「レコーディングのときは、歌詞を見ながらどんな気持ちで歌おうか考えます。MV を作ったらどうなるかなと。映像のイメージで考えます。」

通「MV があると助かる?」

楠「助かるというか、イメージを映像で考えることが多いんです。ドラマ CD の仕事もあったりするんですが、キャラがどんな風景をどう走っているのかをイメージしたりします。歌も一緒で、どんな風景で歌うのかを考えたりします。」

NARUTO竹内順子さん

通「少し前にも話したが、始めたきっかけは NARUTO なんですか?」

楠「NARUTO の主役の声をやっている竹内順子さんに憧れて声優のお仕事を目指しました。学校でワンピースをみんなが見ていたので、自分も会話に入りたくて見てみたら、ハマりました。それから、同じジャンプ作品ということで NARUTO を見たらとっても感動して、泣きました。そこから声優のお仕事に興味を持って、ラジオや舞台など、竹内さんの他の仕事を知っていって、声優を目指すようになりました。」

告知

通「今取り組んでいるプロジェクトについて教えてください。」

楠「告知ってことですかね? (笑) 」

通「そうです (笑) 。」

楠「7月17日に新しい 5th アルバムの『The LIFE』が発売されます。9月16日から東京名古屋大阪でライブもあります。……ちょっと遠いけど、よかったら遊びに来てください。」

楠「他にも色々あるので、 aina-kusuda.net 公式ホームページを見てください。日本語だけど…… (笑) 」

参加者からの Q&A

ここで、一旦通訳からの Question は終わり、参加者から Question を募る形に。

参加者「旅行に持っていく大切なものは?」

楠田さん「パスポート (言い切る) 。……あと携帯。」

参「南條さんとの素敵な思い出は?」

楠「日常のことなので、大事な思い出と言われると難しいな……。」

参「Whataburger *4 には行きましたか?」

楠「まだ行ってないです。」

参「東京ドームのライブ *5 のときは、どんな感じでしたか?」

楠「幸せでした。Happy!」

参「ドライブが好きと聞いていますが、どうですか?」

楠「日常で運転はたくさんします。運転は好きだけど、どこかに行くのが好きってわけじゃなくて。ヒューストンは道が広くて運転しやすそうですね。東京はとても狭いので。」

参「好きなミルクティーの味は? (会場結構ウケる。何かのネタ?) 」

楠「ミルクティーは好きじゃないんです、ごめんなさい……ストレートが好きです。」

参「日本の車を運転するなら車種はどれがいいですか?」

楠「世界で有名だし、トヨタがいいかもしれないですね。」

参「ワンピースで好きなキャラは?」

楠「ルフィ (言い切る) 。主人公が好きなんです。あと、やっぱり熱いじゃないですか。」

参「仕事で知り合った人で、今も交流がある人は?」

楠「仕事で知り合って、プライベートでも遊んでいるのは南條さんが多いです。ゲームしたり。ファイナルファンタジーとか。」

参「μ’s の9周年記念。どう思いましたか?」

楠「単純に μ’s は9人なので、9周年がいいなと *6 。これまで応援してくれた方にお返しする場として良いと思いますし、こうして9周年を迎えて、お祝いする場があって嬉しいです。」

参「lilywhite の1人として、思い出に残っていることは何ですか?」

楠「東京ドームの……春情ロマンティックが、振り付けが難しくて大変だったので、印象に残っています。」

参「5枚目のアルバムについてもっと知りたい。」

楠「7月17日発売です。……全10曲のうち、3曲はわたしが作詞しました。」

通訳さん「これまでの曲の中で好きな曲は?」

楠「新しいアルバムの中でですか?」

通「いや、全部の中でですね。」

楠「全部……今回のアルバムだと、『トラベルガール』が好きです!」

参「μ’s で大変だった経験は何ですか?」

楠「東京ドームのライブのときはすごくつらかった、大変でした。」

スタッフ「次が最後の質問です。」

参「日常生活で最近何か変わったことは?」

楠「うーん……最近マインクラフトを始めました。クリエイティブモードでもくもくと建物を作っています。美術館みたいな建物ができました。

ここまでで Q&A は終了。 このあと、楠田さんと参加者で集合写真を撮ってセッション終了しました。

雑感

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セッションが行われる Ballroom B の待機列

通訳を含めたやりとりがあるのであんまりたくさんの話は聞けないかなと思っていましたが、予想以上に色々な話が聞けた印象です。 国内だとオタクも遠慮して聞けない部分、特にラブライブ!に関してや、南條さんに関してなどの質問が参加者からたくさんされていたのが新鮮でした。 あと、海外の方はやはりジャンプ作品などの話が出ると分かりやすく盛り上がりますね。

最初に通訳さんが英語で Question をそこそこの時間喋るので、その間何を言っているか分からない楠田さんが「なんもわかんねえな」みたいな顔をしていたのがおもしろかった気がします。 途中からは通訳さんのアバウトな質問にツッコミを入れたりしていて、終始和やかな雰囲気でセッションが進みました。

セッションが終わったあと、参加していた中国出身のアイマス P *7 から名刺 *8 をいただいたりしました。 彼は来月、日本で開催される楠田さんのリリースイベントにも来るらしいです。僕の前に座っていた人も AqoursHAPPY PARTY TRAIN TOUR のブレードを振っていたりしましたし、アメリカにも熱心なファンの方がいて、日本に来るきっかけになっているんだな、ということを改めて感じる機会でした。

おわり。

*1:開催期間中のほとんどのイベントに入場できる優先パス。

*2:日本で言うペンライト、キングブレード。

*3:公式のゴジラショップが ANIME MATSURI に出展していたのでそれ繋がり。

*4:現地のハンバーガーチェーン。

*5:2016年4月にあった μ’s のファイナルライブのこと。

*6:単純に9周年でキリがいいという話なのか? スタッフさんと時期の調整があったという話なのか? 不明。

*7:ラブライブ!からは足を洗いました、と言っていた。

*8:ここで言う名刺はアイマス界隈で言う "本業" の名刺で、ハンドルネームなどが載っている奴。

〜楠田亜衣奈さん〜 東京2018冬

この記事は ラブライブ! Advent Calendar 7日目の記事です。

目次

はじめに

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2年前、bpm による 舞台『ESORA』 を観劇したのですが、冒頭でロシュ・フーコー箴言集から引用された次の一節が印象に残っています。

希望 は、頼りにならないものでありながら、それでも、人生の終着点まで、楽しい路を経て我々を連れていくことにおいて、少なくとも役に立つものだ。

ここで登場する "希望" という単語は、日常の中に登場するには若干大げさすぎるように思われ、個人的には次のように置換えてみるとしっくりくる感触があります。

音楽 は、頼りにならないものでありながら、それでも、人生の終着点まで、楽しい路を経て我々を連れていくことにおいて、少なくとも役に立つものだ。

アーティストが歌う楽曲に対して、「聞くと元気が出る」とか、「励まされる」とか、「落ち込んだときに救われる」とか、よく言うじゃないですか。

個人的には 『それって本当か?』 と思うんです。

本当に落ち込んでいるときや、とてもショックな出来事があったときに音楽を聞きますか? それで触発されて元気になったりしますか?

いやそんなことないだろう、と思うんです。 音楽、マジでアテにならない。 本当に必要なときはさっぱり役に立たない。

それでも、ですよ。

お酒が入ったときとか、一人じゃさみしい帰り道とか、ここぞというタイミングで遊びに行ったライブとか、音楽があってよかったと思える瞬間が数え切れないほどあるのもまた事実だと思っています。

頼りにはならないものの、少なくとも役に立つものではある。 本当にそう思います。

* * *

そんな導入から始まる記事で言及するのも若干申し訳ない気持ちがあるのですが、この記事では 最近の楠田亜衣奈さんのアーティスト活動 に焦点を当てたいと思います。

ソロデビュー前後から1年半ほどの活動内容については以前書いたクソ長い記事 楠田亜衣奈さんのソロ・プロジェクトを振り返る〜2年目のコタエあわせ〜 をご覧ください。

3rdアルバム表題曲の『カレンダーのコイビト』の考察についてはソロデビュー2周年のタイミングで公開した 楠田亜衣奈さんソロデビュー2周年に寄せて をご覧ください。

今回の記事では、これまでの2つの記事では語られていない、 3rdアルバム「カレンダーのコイビト」以降の活動内容 について紹介したいと思っています。

タイムライン

年の瀬なので、まずはいくつかのイベントやリリースを取り上げながら、2018年の出来事を簡単に振り返っていきます。

さんくっすんBIRTHDAY 2018

前回の記事では2017年のハイライトでもあった2ndライブツアーのファイナル公演に触れたので、この記事では2018年最初に訪れた国民的イベント、2月1日の 『さんくっすんBIRTHDAY 2018 〜COLOR PALETTE SHOW〜』 から話を始めましょう。

2017年のバースデイイベントに引き続き、「ESORA」での共演者であるファーストサマーウイカさんや茶々さんこと笹岡幸司さんも出演されたこのイベントは、楠田さん演じる「カラフル王国」のプリンセスが悪い魔女・ブラックウイカに奪われた様々な色を歌の力で取り戻す、というコンセプトでした。

特に、演出の中で光ったのはイベントタイトルになぞらえた『カラーパレット』こと遠隔制御で一斉に色が変化する腕輪型のライト。 そして、終盤 「白も黒も立派なカラフル王国の一員」 と、悪役のブラックウイカを受け入れるクライマックス。

そんな演出から個人的に思い出されたのは、 『くっすんサンタがやってきた! 〜リルリルクリスマス in サンリオピューロランド〜』 *1 に参加した際、せっかくだからと見学した Miracle Gift Parade (ディズニーで言うエレクトリカルパレード的な催し) でした。

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カラーパレットとミラクルハートライト

Miracle Gift Parade では幼女先輩の皆様が「ミラクルハートライト」なる遠隔制御機能付きのハート型のライトを振るのですが、これは前述の「カラーパレット」のオマージュ元と言って間違いないでしょう。

パレードの終盤ではキティ先輩が 「光を見たくない、そんなときもあるよね」 と悪役である闇の女王たちに寄り添い、手を差し伸べます。これもまた、くっすん姫がブラックウイカに手を差し伸べるシーンと重なるように思われます。

自分たちと対立する相手とただ戦ったり倒したりするのではなく、その存在を認め、根底にある主張を理解しようと努力すること。 楠田亜衣奈さんの『COLOR PALETTE SHOW』と Miracle Gift Parade に共通するメッセージ ―― それは "ダイバーシティ (多様性) を尊重すること" に違いありません。

さらに付け加えるならば、ミュージカル映画「ヘアスプレー」の劇中歌「You Can't Stop The Beat」が登場シーンで使われたことも、このメッセージを強く示唆しているように感じられます。 *2

何が言いたいかというと、以前 「インプットをアウトプットに変えていくこと」 が楠田さんの持ち味であると評した通り、このバースデイイベントにおいても、楠田亜衣奈さんは 自らのインプットをリミックスし、誰よりも "らしい" パッケージで観客に新しい体験を届けてみせた 、ということです。

1stシングル「ハッピーシンキング!」

4月25日には、前述のバースデイイベントで初披露された 『ハッピーシンキング!』 が1stシングルという形で発売になりました。

www.youtube.com

一度聞いていただければわかる通り、今までになくキャッチーな楽曲になっています。 もっと驚かされるのはリリックに散りばめられた 「The 楠田亜衣奈 feat. こだまさおり としか言いようのないパンチラインの数々です。

サビの歌詞をまるごと引用します。

しのごの言わずに迷わずハッピーシンキング
あとはたいていケセラセラ
ポジティブパンチで陽気が大賛成
はーわーゆー ふぁいんせんきゅー
協力ありがと キミとならオールOK◎

説明不要!! やばい!

ポジティブパンチとは? 陽気が賛成するとはどういうことか? なぜ日本人は英語で元気かどうかを聞かれると実際の調子に関わらず Fine と答えてしまうのか? 様々な問いが生まれては消え、意味を咀嚼しようとしても楠田さん楽曲史上最速とも言われる BPM で思考が流されていきます。

そんな歌詞について、本人はこう評しています。

「宣誓! 楠田亜衣奈はこれからこういう曲を歌っていきます!」という歌詞になっているのがうれしいんですよね

こだま「〈ぴーす!〉って言ってる楠田さんは絶対かわいい」 - Real Sound|リアルサウンド

そんな宣誓文からもう1フレーズ引用させてください。

半径目の前 責任持ち合って 万事解決

このフレーズから見えてくるのは、 半径目の前にいる相手や出来事に対して、優しくしたり思いやったりするだけでも世界は救われるはず ―― という、ともすればあまりにも性善説に寄った世界観。

個人的には、以前ライブのMCで「いろんな円がたくさん交わるところに同じ想いみたいなのがある」と語られていたように、この <半径目の前> というフレーズにどうしようもなく楠田さんの主張を感じるのです。

どうですか? 単にアッパーで楽しい気持ちになれるという以外にも、この曲から見えてくることがある気がしてきませんか?

4thミニアルバム「アイナンダ!」

2018年はとにかく密度の高い1年でした。

AINA YEAR と呼ばれた2017年がまるで序の口だったとでも言わんばかりに、シングル発売のわずか3ヶ月後、圧倒的スピード感で7月25日に発売された4thミニアルバム 『アイナンダ!』

www.youtube.com

表題曲の「アイナンダ!」を筆頭に、 "今だから歌える愛の歌" をテーマに新曲が全部で7曲収録されました。 1stシングル B 面の「会いたいのでも言えないよ」に引き続き、インターネットに熱狂的ファンを多数抱えることで知られる 倉内達矢さん *3 が参加する楽曲が2曲収録 されたことも嬉しい悲鳴でした。

シングルの発売から3ヶ月でリリースされたこともあり、「正直制作時間が足りないんじゃないか?」 「VAP のスタッフさんの残業時間が心配」 などとファンの間で噂されたりもしましたが、フタを開けてみたらめっちゃいいアルバムだったんですよね。

第一印象のキャッチーさで言うなら、ある意味キャッチーであることを目的にしている「ハッピーシンキング!」に敵わない部分もあるでしょう。 アニソンらしさ、オタクが食いつく率の高さで言うなら、バカみたいに強い曲だらけだった「Next Brilliant Wave」 *4 に敵わない部分もあるでしょう。

しかしながら "アイ" をテーマに歌われた「アイナンダ!」収録の7曲の楽曲たちは、不思議と何度でも聞きたくなるような魅力を備えていることもまた事実だと思うのです。

PERFECT AINA YEAR に至るまでの時代をアーティスト活動の第1シーズンであるとするならば、 「ハッピーシンキング!」以降は第2シーズンである とわたしは主張します。仮にそうであるとするならば、「アイナンダ!」は第2シーズンが向かう先がはっきりと示されたアルバム、とも言えるでしょう。

特に驚かされたのは、以前と比べると 様々な面で楠田さんの意見が楽曲作りに反映されている ことです。 たとえば 『Smileプラス』 に関しては、インタビューで次のように語られています。

テーマは「愛は地球を救う」です(笑)。
(中略)
そこからイメージの説明を何度もやりとりして、最終的に、作曲を倉内さんにお願いしたいですと伝えて、イメージにピッタリの曲になりました。

楠田亜衣奈最新ミニアルバム『アイナンダ!』発売! 南條愛乃が作詞をした「you & ai」の歌詞に「なんちゃんの“愛”を感じました」【インタビュー】 | 超!アニメディア

自ら表現したいイメージがあって、そのイメージを具体化するために 作曲家さんを指名する楠田さん 。 これって僕らが元々想像していた以上に完全に「アーティスト」の姿そのものじゃないですか?

2018年は、「ハッピーシンキング!」や「アイナンダ!」のリリースを通じて、 楠田さんのアーティスト活動に対するスタンスの変化が明らかになってきた1年 でもありました。

雑感

今年参加したイベントやライブを通して、個人的に思ったことを説得力ゼロで書いていきます。

「やさしいヒカリ」のこと

(元の文章は自己検閲により削除されました。)

「プラチナデイズ」のこと

歌詞の解釈が変化した楽曲の話で言うなら、 『プラチナデイズ』 のことも印象に残っています。

一度聞いていただければすぐわかるのですが、「プラチナデイズ」はこれから結婚式を迎えようとする新婦さんをテーマにした楽曲です。

であるが故に、楠田さんもインタビューでは次のように語られています。

すごくいい曲でいい歌詞だけど、結婚した経験がないという点で、100%心底共感することができなくて(笑)。
そこは「きっとこういう気持ちになるのかな〜」という想像で歌っています。

イメージは愛の使者、楠田亜衣奈 7つの“愛のカタチ”音楽に : MusicVoice(ミュージックヴォイス)

わたしも当分結婚する機会はなさそう (なんなら一生なさそう) なので、 この曲は刺さらないだろうな、と最初は思っていました 。 楠田さんも「チップやヒメのことを思いながら歌っている」 *5 なんて当初は語っていて、正直いまいちピンと来ない曲でした。

ところが、3rdライブツアーの横浜公演のときに、楠田さんがあるフレーズを歌いながら 急に何かが "わかった" かのような表情をされていた んですね。

見つけて 手をのばして 選んでくれた奇跡
ずっとはなさないで

その優しげな表情を目にした瞬間に、急にそのフレーズの意味するところがわたしの頭の中にもスッと入ってきた気がしました。

楠田さんが今目の前で歌ってくれていること。 色々な選択があって、自分がその場所にいられていること。

もし違うルートを歩んでいたら、こんな日には辿り着かなかっただろうと思うと、それを <奇跡> と表現するのも悪くはない気がして、なんだか そこに至るまでのすべてに感謝したくなりました

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例によってオタクの錯覚なのですが、ライブ中に言葉を交わすでもなく、そんな気持ちを共有できた気がして嬉しかったんですよね。

それと同時に、 歌詞の一部分だけをピックアップして、自分の境遇を重ねたり共感したりする 、そういう楽曲の聞き方があるということを教えてもらったようにも思いました。

たとえば、「カレンダーのコイビト」については以前このように書きました。

この曲の歌詞で描かれている "ふたり" の関係性は重すぎて、もはや "コイビト" が家族になって一緒に過ごす何十年もの人生を描いた歌詞としてしか解釈できないと思っています。

歌詞全体で見るなら、「プラチナデイズ」も「カレンダーのコイビト」も、オタクが共感できるような歌詞にはなっていないと思います。

しかしながら、歌詞の一部分だけを切り取ることが許されるなら、色々な見方ができるんじゃないでしょうか。それこそ、 演者とファンの間の関係性をそこに重ねること だってできるのかもしれません。

楽曲の解釈は、時間が経過するに連れて変わっていくものである。 それを教えてくれた印象的な出来事でした。

歌う意味の変遷、心理的安全性

楠田さん本人が作詞された 『Anniversary』 (「カレンダーのコイビト」収録) という楽曲があるのですが、その中にこんなフレーズがあります。

これからもよろしくだよって 優しく笑った
君とこの手 繋いで歩いてく

そんなフレーズに重ねるように、ソロデビュー1周年の当時、楠田さんは "歌う意味" について次のように語られていました。

だから私にとっての歌は、ファンの方たちとのコミュニケーションツールというか、同じ思いを共有できる表現の形なのかなと思ってます。

一方で、カレンダーのコイビト以降、ソロ活動に対する思いは 「『Anniversary』を書いた当初から少しずつ変わってきた」 とも語られていました。 そんな気持ちの変化について、ハッキリとその形が見えてきたのが2018年の1年間の活動だったのかなと思っています。

ただファンと遊ぶためのツールというだけでなく、 自分のアイデアや世界観を音楽という形で表現し、パフォーマンスすること

特に「アイナンダ!」というミニアルバムは、そんな 本人の好きなものを表現する姿勢が強く表れたリリース だったように思います。

アニソン好きなかたの好みとは、ちょっと違ったジャンルの楽曲もあると思うんですけど、いまだったらファンのかたも「くっすんはこんなのが好きなんだな」って受け取ってくれると思ったんです。

楠田亜衣奈が歌う、7つの『愛』のかたち──『アイナンダ!』ハイレゾ配信開始! - OTOTOY

それは、これまでのイベントやライブで楠田さん本人の自信が付いてきたということもあるのでしょうし、様々な形のパフォーマンスをファンが高い熱量で受け止めてこれたから、という部分もあるのかもしれません。

人間は、すぐ怒られてしまったり、強く批判されてしまうような環境では、意見を言いたい気持ちよりも恐怖心の方が勝って、なかなか素直な発言ができなくなってしまうものです。

そこで、マネージメントの文脈では、率直な意見を引き出すためには 心理的安全性』 が重要であるとよく言われます。

発言の内容によって人格を否定されることがなく、建設的な議論ができるという前提があってこそ、本当に言いたいことや表現したいことが表現できる のではないでしょうか?

たとえば、楠田さんの今回のライブツアーでは、MC中に次のような一幕がありました。

楠田さん「今日は話どんどんそれてる……それてると思ったら『それてるよ!』って優しく言ってね」
(中略。しばらくトークが続く)
ファン「それてるよ!」
楠田さん「今のは全然それてないよ!」

世の中、オタクが言ったことには多少同調してあげるような演者さんが多いように思いますが、 楠田さんはオタクの言うことが違うと思ったときは容赦がない

逆に言うと、それだけ率直な意見を返しても怒ったりしないという信頼を勝ち得ているのかなと思ったりもします。

端的に言って、 楠田亜衣奈さんのライブには心理的安全性があります

今までは「ファンの方に楽しんでもらえたら一番だな」という気持ちでしたけど、「私の好きなものを詰め込みたい」って気持ちに変わってきましたね。

一年中くっすんと一緒! 楠田亜衣奈3rdアルバム『カレンダーのコイビト』リリース記念インタビュー! – リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

これまでの数年間に及ぶ積み重ねがあるからこそ、楠田さん側の気持ちも「わたしが好きなものを見てみてくれよ!」という風に変わってきたように思いますし、それこそが アーティスト・楠田亜衣奈さんの第1シーズンと第2シーズンにおける大きな違い だとわたしは主張します。

結局 "アイ" とは何だったのか?

結局、「アイナンダ!」というアルバムのテーマでもある "アイ" とは何だったのでしょうか?

3rdライブツアーのパンフレットでは、これまでの楽曲について次のような言葉がありました。

恋愛ソングも多いし、気づいたら愛でいっぱいですね (笑) 。
だから「くっすんって、どんな曲を歌うのかな?」と聞かれたときに、 (中略) 今はひとつの答えというか、ひとつの共通点を見つけたかなという気がしています。

その答えのひとつは、 『First Sweet Wave』→『Infinite Memories』→『カレンダーのコイビト』という流れで繋がってきた物語 だと思っています。

進展していく二人の物語として捉えた場合の解釈としては 以前の記事 に書いた通りですが、歌詞の一部をピックアップするならば、演者とファンの関係性が描かれていると捉えることもできるでしょう。

この3曲を仮に 『メインストーリー』 と呼ぶことにすると、「アイナンダ!」というアルバムが教えてくれるのは、 コイビトやパートナーとの関係性だけじゃない、様々な方向に伸びていく『スピンオフ』 だと考えています。

  • 故郷やそこに暮らす人々に対するアイを描いた 『ただいまを歌おう』
  • バレンタインデーや結婚式など、人生を彩るイベントをフィーチャーした 『Melty Valentine』や『プラチナデイズ』
  • かけがえのない友達と過ごす楽しい時間を描いた 『you & ai』
  • そして、平凡な毎日や、自分を取り巻く日常に対するアイを歌う 『Smileプラス』

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脳内にある「アイナンダ!」各楽曲のイメージ

コイビトやパートナー以外にも、身の回りにはきっと何人も大切な人がいて、そんな大切な人と過ごす時間があるからこそ、季節の移り変わりや日々のイベントが色づいて見える。

「アイナンダ!」の収録曲は必ずしもキャッチーな楽曲たちではないかもしれないけれど。けれども 日々に寄り添ってくれる優しい楽曲である が故に、ライブの中でそんな風に思いを馳せることができました。

* * *

そして、「アイナンダ!」というアルバムの中でも最も重要な1曲、それが 『アイ・アム』 です。

楠田さん本人よる歌詞の中には難しい言葉はまったく出てきませんし、表現もとにかくストレートですが、でもだからこそ 楠田さんにしか書けない世界観がある のだろうと思います。

誰もが恥ずかしい思い出を持っているでしょう。 目を覆いたくなるくらいの大きな失敗をしてしまった日だってあるでしょう。 今思い出すと枕に顔を埋めて足をバタバタしてしまうほどに痛い、中二病に満ちた若かりし日もあったかもしれません。

楠田さんがそれでも <私は私だ> と言い切ることができるのは、 いま自分がこの場所に辿り着けてよかったと、過去の道のりも含めて肯定できたから なんだろうなと思います。

過去に紅白歌合戦に出たこともあるような方ですし、そもそも昔からの夢をちゃんと実現している方なので、そりゃあそうだよなあとも思います。

ひるがえって自分はどうか。

そんなに人に胸を張れるような生き方はできていないし、つい最近も大きな失敗をしましたし、マジで落ち込む日もあります。 どちらかというと自己肯定力が低い方の人種であると思います。

それでも、「アイ・アム」という曲をライブで浴びていると、いまこの場所で楠田さんのライブに居られることに感謝したくなるし、 いまこの場所に居られるのだから、これまでの選択も致命的には間違っていはいないのかもしれない とウッカリ思ってしまいました。

どうしてそういう気持ちになれるのか、と言われると自分でもよくわからないのですが・・・

カウンセリングじゃないけれども、自己肯定感は大事ですし、 自己肯定感があるからこそ、他の物事に対する "アイ" みたいなものも生まれてくる ―― そう考えると、「アイナンダ!」の中に自分自身に言及する楽曲があることにとても納得がいくし、そういう楽曲があってくれてよかったなと思います。

* * *

最後に表題曲の 『アイナンダ!』 についてなのですが、この楽曲はこれまでに紹介してきた楽曲たち全体を包み込む、 "愛でいっぱいの環境そのもの" にあたる楽曲なのかもしれません。

それでいて、「First Sweet Wave」「Infinite Memories」「カレンダーのコイビト」に続くメインストーリーの最新作であるようにも感じられます。

ここがわたしの居場所だって 会うたび実感してる
だってこんなにしっくり来てる 説明つかない

たとえばこの辺とか、完全に楠田さんのイベントに行っているときの限界オタクの気持ちそのものですよね?

いつか未来に迷う時も 一緒なら怖くない
もっと無謀な選択だって できちゃいそうだよ

無謀な選択、どんどんしていきたくないですか?

2018年の楠田亜衣奈さんを何よりも体現する楽曲であるがために、ライブが続いた日々からしばらく経って、不思議といちばん恋しくなっている曲でもあるのかな、と思います。

おわりに

3rdライブツアーの某公演の前日のことになるのですが、プライベートで落ち込むようなことがあって、 「正直明日ライブに行く気になんてなれないな」 と思っていた日がありました。

それでも、せっかくチケットを持っているし、客席に穴を開けてしまうのも申し訳ないから、「今日は静かに見るだけにしよう」と思って会場に向かったんですね。

しかし、今回の「アイナンダ!」ツアーでは、「ただいまを歌おう」で客も振り付けをやらされるシーンがありました。しかも、ここで一緒にやる振り付けというのが 一昔前の芸人のギャグみたいで一見めちゃくちゃダサい んです。 *6

そんな振りをやっていたら、だんだん落ち込んでいた自分が馬鹿らしくなってきてしまって、気づいたら RADWIMPS の歌詞じゃないけれども "自殺志願者" が一端の "幸福論者" に変わっていました。

もしそこまで考えてあの振り付けコーナーがあったんだとしたら、本当にすごいことじゃないですか? 冒頭で散々「音楽は頼りにならない」なんて書きましたが、こと楠田さんに関しては当てはまらないのかもしれない。

ちょっとだけ、そんな風に思いました。

* * *

2019年もまた楠田さんのバースデイイベントがあります。

特に名古屋の方がまだ全然チケット買えるようなので、 東京名古屋大阪に住んでいる人類は全員チケットを買いましょう

音源を聞いたことがないけど興味はある、という人は @tondol に申し出ていただければアルバムを配布します。

やっていきましょう。

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

*1:今でこそピューロランドでイベントを開催する声優さんも多くなりましたが、当時はまだ例も少なく、イベント発表時はかなりの衝撃がありました。皆さんは KAWAII FESTIVAL をご存知ですか?

*2:「ヘアスプレー」はアメリカに根付く人種差別をテーマにしたミュージカル作品です。

*3:「LONELIEST BABY」や「Shangri-La Shower」の作編曲、「WATER BLUE NEW WORLD」のストリングスアレンジなどで知られる。今回の記事で初めてラブライブ!っぽいワードが出てきましたね。

*4:今でもたまに「進化系HEROINE」を聞いて楽曲としての強さに驚かされることがあります。

*5:チップやヒメ、というのは楠田さんがペットとして飼っているワンちゃんの名前です。

*6:一体どんな振り付けなのか気になった方は、ぜひライブに行きましょう。

宇宙 No.1 アイドルとは何だったのか

この記事は ラブライブ! Advent Calendar 2017 の 16 日目の記事です。1 週間も遅刻してしまい大変申し訳ありません。

昔、後輩に「 結局2期の『宇宙 No.1 アイドル』の話よくわかんなかったんすけど、アレなんなんすか 」と質問を受けたことがあり、そのときに「いや、一見よくわからないけれどもアレはめっちゃ重要な話なんだよ」という回答をしたことを思い出したので、この記事ではその話をする。

* * *

矢澤にこに関しては語らなければならないことが色々ある。

以前、ラブライブ!無印に関しては信頼の塊である某氏が「 矢澤さんを推すって『重い』よね 」と仰っていたことをよく覚えているが、実際そのとおりだと思う。

今までも、そしてたぶんこれからも、あれほどまでにスクールアイドルが好きで、そして自身も最高のスクールアイドルであることにこだわり続けたスクールアイドルはいないだろう。

矢澤にこはブレない。

仮に何千回何万回世界線が巡ろうとも、そのすべての世界線で矢澤にこはスクールアイドルをやるだろう。

高坂穂乃果が「廃校を救うためにスクールアイドルになる」というアイデアを思いつかない世界線もあるかもしれない。

絢瀬絵里が「やりたいこと」に気づくことができないまま卒業してしまう世界線もあるかもしれない。

南ことりが結局ラブライブ!本選を諦めて海外に飛び立つ世界線もあるかもしれない。

園田海未がミニスカートを一生履かないまま終わる世界線もあるかもしれない。

星空凛が子供時代からのコンプレックスをくすぶらせたまま生きる世界線もあるかもしれない。

西木野真姫が「アイドルの楽曲なんて俗っぽい」という考えを曲げずに終わる世界線もあるかもしれない。

東條希が「本当の望み」を誰にも伝えられないままでいる世界線もあるかもしれない。

小泉花陽がその憧れを胸の中にしまいこんだまま、いちアイドルファンで終わる世界線もあるかもしれない。

しかし、矢澤にこは、矢澤にこだけはスクールアイドルを諦めないだろう。 *1

宇宙 No.1 アイドル

ラブライブ! 2 期第 4 話「宇宙 No.1 アイドル」のあらすじを紹介する。

このエピソードは、ラブライブ!本選出場が決まったにも関わらず、練習に参加せず早退したにこを 8 人が追いかけるところから始まる。 *2 *3

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練習を欠席した理由を問い詰めるべく、アキバの街中を逃げるにこをコミカルに追いかける 8 人だったが、アキバの地理を熟知したにこの逃げ足は早く、すぐに逃げられてしまう。

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「にこちゃん、意地っ張りで相談とかほとんどしないから・・・」

悩む 8 人の目の前に偶然現れたのは、矢澤にこの妹のこころ( CV.徳井青空 )だった。

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そんな 8 人のことを矢澤こころは「 スーパーアイドル・矢澤にこのバックダンサー『 μ's 』 」だと言う。 その様子から、8 人はにこが自身のスクールアイドル活動について、家族にどのように説明しているのかを察するのだった。

ここで注目したいのは、このお話の時点で 8 人は矢澤にこの私生活についてほぼ何も知らなかったということだ。 1 年生の頃からずっとお互いの存在を見知っていたはずの希と絵里でさえも、にこに妹がいることを知らなかったと言っている。

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本筋からは離れるが、絢瀬絵里園田海未矢澤にこに対し怒りの感情を露わにしているのも興味深い。 自身のスクールアイドル活動に一定のプライドや自信を持っていなければ、こころの物言いに怒りを感じることもないだろう。 つまり、元々ノリ気でなかったこの 2 人も、気づけばアイ活にどっぷりハマっていることが暗に伝わる描写だと思う。

閑話休題。8 人のことを「バックダンサー」だと説明していたことについて、にこはこう語る。

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「家では元からそういうことになっているの」
「私の家で私がどう言おうが勝手でしょ」

そんなにこに希は理解を示す。

「たぶん、元からスーパーアイドルだったってことやろな」
「にこっちが一年の時から、あの家ではずっとスーパーアイドルのまま・・・」

花陽もにこと同じアイドル好きの立場からにこの心情を語る。

「本当にアイドルでいたかったんだよ」
「わたしもずっと憧れていたから、わかるんだ」

にこが 1 年の頃、ひとりでスクールアイドルを続ける様子を見ていた絵里もこう続ける。

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「あの時、話しかけていれば・・・」

* * *

もしこれが普通の物語ならば、このあとどのような解決を試みるだろうか。

にこがスーパーアイドルだと信じているこころ、ここあ、小太郎の 3 人を μ's のライブに招待し、現実に気づいてもらう方法もあるだろう。 にこ自身が自らの口から「嘘をついてごめんね」と謝るのも、そんなに悪くない結末のように思える。 何せ、μ's にはラブライブ!の本選に出場するほどの実力があるのだから、にこの妹弟たちだって彼女たちのライブを見れば納得し、賞賛するだろう。

しかし、この物語はラブライブ!の文法の上にある。 このエピソードの終盤で描かれるのは、誰ひとりとして登場人物を傷つけずにこのわだかまりを収束に導くウルトラ C だった。

それは、絵里と希がお手製で用意した衣装で、スーパーアイドル矢澤にこの最後のライブをこころたち 3 人に見せてあげること。 そのステージの上で、アイドルとしての矢澤にこ自身が μ's の一員になる と宣言すること。

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わたしが、ラブライブ!シリーズ全体の中でもこの回を未だにずっと好きでいるのは、このエピソードが示す回答がひたすらに "優しい" からだ。 8 人がにことその妹弟に示した回答は、いろんなものを同時に救っている。

ひとつは、μ's 結成以後も嘘をつき続けなければならなかった矢澤にこ本人の悲しみ。

ひとつは、1 年の頃、にこに手を差し伸べることのできなかった絵里と希の後悔。

ひとつは、スーパーアイドルでもあり最高の姉でもある矢澤にこに寄せられた幼い妹弟たちの信頼。

そして、まだ真の意味で 9 人のユニットになりきれていなかった μ's そのもの

「いま、扉の向こうには、あなたのライブを心待ちにしている最高のファンがいるわ」
「さあ、みんな待ってるわよ」
「でも違ったの。これからは、もっと新しい自分に変わっていきたい」
「この 9 人でいるときがいちばん輝けるの。ひとりでいるときよりもずっと、ずっと・・・」
「だから、これはわたしがひとりで歌う、最後の曲」

常識的な物差しで測るならば、いきなり学校の屋上ににこたち 4 人のためにあれほど豪華なステージを作るなんて、絶対に無理に決まっている。 あのステージを作り上げるのにいくらお金が必要だろうか? 学校の許可は? 省略された期間に誰がどれだけの時間を掛けて準備をしたのか? しかし、ラブライブ!という枠組みの中では、そんな指摘は一切無意味だ。

ラブライブ!ならば、起承転結の「承」がない飛躍したプロットもアニメーションの上で違和感なく実現できる。 なぜなら、ラブライブ!とは、点と点の間を描かずとも、本質的な結論に容赦なくジャンプすることができる特殊な文法を持ったシリーズ だからだ。

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先に書いたように、こころたちに真実を告げることもできただろう。 でも、この物語はそれをしない。 宇宙でいちばん優しい嘘で、矢澤にこ本人を含めいろんなものを救ってくれた ことが、わたしはリアルタイムで視聴したときどうしようもなく嬉しかった。

無印ラブライブ!のアニメシリーズを俯瞰したとき、矢澤にこの加入タイミングは 1 期 5 話の「にこ襲来」であると解されることも多いだろう。 しかし、矢澤にこが本当の意味で μ's の一員になることができたのは、この「宇宙 No.1 アイドル」のエピソードがあったからだと信じている。

The School Idol Movie

矢澤にこをフィーチャーするのであれば、「劇場版ラブライブ! The School Idol Movie」にも触れておきたい。

TSIM *4 の公開当時盛んに語られていたことだが、9 人が SUNNY DAY SONG のライブ当日、会場に向かうシーンの中にこんな会話がある。

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希「誰も遅刻しなかったみたいやね」
真姫「まだひとり分からないわよ?」
絵里「いいえ、きっと誰よりも早く待ってるんじゃないかしら」
穂乃果「あっ、にこちゃんいた!」
にこ「おそーい!」
花陽「にこちゃん、ずっとひとりで・・・」

語るのも野暮かもしれないが、ここでにこが誰よりも早く待っているという描写は、にこが誰よりも早くスクールアイドルを始め、ずっと 8 人のことを待っていた ことを暗喩しているようにも思われる。 にこがあの場所で最初から待っていると絵里と希が信じていたのは、1 年生の頃の彼女の姿を知っていたからに違いない。

TSIM からもうひとつ引用したい。

最後のライブで μ's の活動を終わりにすることについて、矢澤にこだけが幾度となく晴れない顔をしている描写がある。

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「真姫の言うとおりよ」
「ちゃんと終わらせるって決めたんなら、終わらせないと。違う?」

人一倍アイドルのことが好きで、アイドルに憧れ続けたにこだからこそ、μ's を終わりにすることについて誰よりもこだわっていたし、どこか納得しきれない気持ちを抱えていたのかもしれない。 そんなにこが、最後の最後、SUNNY DAY SONG のライブ会場に向かう道中でやっと笑顔になるシーンは見逃せない。

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μ's として決めたことも諦めないし、スクールアイドルというシーンを盛り上げることも諦めない。 それが両立するライブにたどりつくことができたからこそ、にこのこの晴れ晴れとした表情があるのかもしれない。

映画の最終盤では、神々しい衣装を身に着けた 9 人の「 僕たちはひとつの光 」が披露される。 μ's の物語におけるこのライブの位置付けは、正直言って、現実のものとも妄想のものとも判別がつかない何とも微妙な場所にある。 *5 そんな「僕たちはひとつの光」の中に、本質 of 本質とも言えるフレーズが存在するので、それを紹介することでこの記事の締めとしたい。

こんなにも心がひとつになる
世界を見つけた 喜び (ともに)
歌おう 最後まで (僕たちはひとつ)

矢澤にこにとって、ひとりでスクールアイドルをやっていた 1 年生の当時、 "世界" とは辛く寂しいものだったに違いない。 日々の辛さや寂しさに負けずに、家族のことを支える "よいお姉ちゃん" で居続けるためには、自身がスーパーアイドルであると嘘をつくのも仕方のないことだっただろう。

μ's はそんな矢澤にこの過去を否定せず、その個性もまるごと認めた上で輝くことを許してくれる場所だった。 だから、ここで歌われている "世界" とは、μ's を通して矢澤にこが再発見した、スクールアイドルとして輝けるキラキラした日々 のことだと考えている。

* * *

最後になるが、もし手元に「The School Idol Movie」のブルーレイ、あるいは DVD をお持ちなら、是非それをプレイヤーにセットしてほしい。 そして、気合いを入れて「僕たちはひとつの光」のシーンまで再生してほしい。 "こんなにも心がひとつになる" というフレーズが歌われた直後の矢澤にこの表情を見てほしい。

あえて画像の引用はしないが、アニメーションのキャラクターの表情ひとつにこれほどまでに心を動かされることは、きっとこれまでも、これからもないだろうと思っている。

わたしからは以上です。お読みいただきありがとうございました。

*1:矢澤にこだけがどの世界線でもスクールアイドルをやっていることを指摘した「矢澤にこ不動点説」という学説が知られている。

*2:本当はラブライブ!の本戦出場が決まるくだりもあるが、ダイナミックに省略する。

*3:どうでもいいが、矢澤にこが買い物をしていたスーパーの名前は「HANAMARU」だ。

*4:The School Idol Movie の略。ラブライブ!劇場版のこと。

*5:個人的には、このライブは後世のスクールアイドルファンの視点から描かれた "神話" に近いものなのではないかと思っているが、本論から離れるためここでは割愛する。

スカンジナビア号にP.S.の向こう側を見る

この記事は ラブライブ! Advent Calendar 2017 2日目 の記事として公開されました。前日の記事は oden さん沼津系プログラミング言語 ルビィ でした。

このブログの過去記事を掘り返したら、brainfxck で書いた fizzbuzz が転がっていたので、ルビィに翻訳したもの を記念に置いておきますね。ピギィ!


皆さんこんにちは。今日も目覚めたら違う朝でしたか?

突然ですが、この記事を読んでいる皆さんは スカンジナビア号 ってご存じですか?

スカンジナビア号

スカンジナビア(当時の船名は「ステラ・ポラリス」)は、1927年にスウェーデンで建造されたクルーズ客船 で、就航後発生した第二次世界大戦の混乱を生き延び、1969年頃に至るまで長らく富裕層向けの豪華客船として活躍しました。 その優雅な姿から 七つの海の白い女王 とも呼ばれ、甲板に屹立する2本の高いマストが印象的なその姿は、たくさんの人々に親しまれていたと言います。

f:id:tondol:20171126185445j:plain ファイル:Skandinavia20060831.jpg - Wikipedia (クリエイティブ・コモンズ 表示-継承ライセンス)

SOLAS条約の改訂によりクルーズ船としての就航が不可能になってからは、当時の西武グループ傘下の伊豆箱根鉄道が所有権を譲り受け、静岡県沼津市西浦木負767番地沖に停留、1970年から フローティングホテル・スカンジナビア としてホテル営業が開始されました。

ちなみに、この際ホテルの名前が「スカンジナビア」に変更されたのは、前の所有者であるクリッパーライン社との ステラ・ポラリスの名称継続使用を認めない」 という契約条件によります。

1970年のホテル営業開始から2005年の完全営業終了に至るまで、スカンジナビアは長井崎の西浦寄りに停留されていました。


この場所は、浦の星女学院のモデルとなった 長井崎中学校の所在する長井崎のすぐ側 であり、仮にスカンジナビアの営業が今も続いていたとしたら、ラブライブ!サンシャイン!!の作中でも重要なスポットになっていたことは間違いありません。

また、当時ホテル営業を行っていた西武グループ傘下の伊豆箱根鉄道は、ラッピングトレインでお馴染みの駿豆線伊豆・三津シーパラダイスを運営している企業でもあり、この点でもラブライブ!サンシャイン!!のファンにとっては馴染み深く感じられるのではないかと思います。

バブル景気終了後の消費低迷などもあり、船体維持にかかる膨大なコストを負担し続けることが難しくなった伊豆箱根鉄道は、2005年にスカンジナビアの営業を終了しました。

その後のスカンジナビアは、スウェーデンのペトロ・ファースト社に売却され、上海での改修を経て故郷のスウェーデンで再びホテル兼レストランとして営業される予定でしたが、曳航中の2006年9月2日に 和歌山県潮岬沖で沈没 し、その79年の歴史を終えました。

P.S.の向こう側

ところで、ユニット CYaRon! が歌う P.S.の向こう側 という曲があります。

www.youtube.com

かわいらしくも楽しくノれる CYaRon! らしさの詰まった楽曲ですが、改めて歌詞を読んでみると、いつ会えるかも分からない、遠くに行ってしまった友達への想いが切なくも綴られていることに気付きます。

「返事なんか要らないけど」 から始まるCメロのフレーズに、2nd ライブツアーで心を締め付けられた方も多いのではないでしょうか?

かくいうわたしもその内のひとりでした。

手紙を書く以上は、そこに想いを込める以上は、返事に期待しないなんてことはないはずだと思うのです。 もし何か一言でも相手から返事が届いたならば、飛び上がりたくなるくらいに嬉しくなってしまうに決まっているじゃないですか。 それでも、「ありがとう」と添えてポストカードをポストに投函する気持ちとは、いったいどんなものなのでしょうか? この歌詞を読んで、わたしは CYaRon! の3人に幸せになって欲しい 以外の感情がありません。

なお、「P.S.の向こう側」は、1期のブルーレイを全巻ゲーマーズで購入しないと手に入らないという入手難度の高い楽曲ではありますが、この曲に限らず ブルーレイ全巻購入特典曲はどれもマジでいい曲 なので、友達に借りるなり札束でゴリ押しするなりして、全国に1億人いるスクールアイドルファンの皆さんにマスト聞いていただきたいです。 *1

……そろそろのこの記事の目的が分からなくなっている頃かと思いますが、もう少しお付き合いください。 次はとある喫茶店を紹介します。

海のステージさん

海のステージさん は、前述のスカンジナビア号があった土地のすぐとなりで営業されている海沿いの喫茶店です。 サンシャインウォーカーが発売された際、このお店のテラス席が表紙のイラストに採用されたり、Aqoursのキャストがロケで訪れたり していたため、その関係で知っていたり、行ったことがあるという人も多いのではないでしょうか?

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海のステージさんはテラス席で海を眺めながらミルクティーをいただいたりできる素敵なお店ですが、以前はサンシャインの聖地というよりも、スカンジナビア号ゆかりの喫茶店として知られている場所でした。

店舗を訪れると店内の奥の方のスペースにスカンジナビア号ゆかりの品や記念品が大量に展示されており、お店のご主人にスカンジナビア号について尋ねてみると 1を訊くだけで100を教えてくれる という具合で、博物館的な楽しみ方をできるお店でもあります。

わたしはちょうど2ndライブツアーの埼玉公演直前に伺ったのですが、お店を出発する直前まで、スカンジナビア号にまつわるありとあらゆる資料を紹介してくださいました。

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個人的には、わたしがまだ小学生だった頃に家族で内浦のあたりを訪れた際、まだ営業中だったスカンジナビア号の名前を見聞きしていたため、聖地巡礼のつもりで海のステージさんを訪れた際に、聞き覚えのある「スカンジナビア号」の展示がたくさんあることにとても驚かされました。

スカンジナビア号とP.S.の向こう側

本題に入ります。

ここからは完全に個人的なイメージの連想になってしまうのですが、「P.S.の向こう側」を初めて聴いた際に脳裏に浮かんだのは、あのサンシャインウォーカーの表紙同様、海のステージさんで冷たくなった紅茶を飲んでいる CYaRon! 3 人の様子でした。

理由は直感としか言いようがないのですが、CYaRon! が遠くに行ってしまった誰かを想いながら紅茶を飲むとするならば、もっともその様子が「画」になる場所は 海のステージさんのテラス席以外にない と思ったからです。

ここで、「P.S.の向こう側」の歌詞を引用しながら考えてみたいと思うのですが、この曲で歌われている想い人の行方を想像するにつれ、なんだか スカンジナビア号にびっくりするほどその境遇が似ている のではないかと思うのです。


離れて (Oh no!)
しまうなんてありえないことだよと
笑ってたね


スカンジナビア号は、あのあたりで幼少期を過ごしたAqoursのメンバーにとってはいつも当然のようにそこにある存在であったはずで、それがある日急になくなってしまい、どこか遠くに行ってしまったことになります。 CYaRon! の 3 人が遠くへ旅立った大切な人のことを想い、海辺で水平線の向こうを見つめるときの目線の高さは、ぼくらが海の向こうに去っていったスカンジナビア号を想うときの目線の高さと近しいのではないでしょうか。


返事なんかいらないけど
楽しかった季節 (I need you)
最後にひとこと オマケみたいに
伝えておこう (p.s.)
「どうもありがとう」


どこで何をしているかもわからないけれど、ふと何でもない拍子に楽しかった日々のことを思い出してしまったり、返ってくるはずもない手紙を書いてみて、あまつさえ追伸にお礼の言葉を重ねてしまったりする。 そんな ″誰か″ に対する気持ちが、なんとなく スカンジナビア号が辿った境遇にリンクしてくる 気がするのはわたしだけでしょうか?

ここで、もうひとつ触れておきたいのは、渡辺曜という女の子のパーソナリティについてです。

f:id:tondol:20171126183758p:plain ラブライブ!サンシャイン!! 第10話「シャイ煮はじめました!」

渡辺さんは、これまでの描かれ方を見ていても分かるとおり大層なパパっ子で、船乗りとして遠い海の上で働いているであろうお父さんへの気持ちが作中の随所で溢れているように思います。 もっともそのパーソナリティがよく出ていると感じられるのは、やはりシャイ煮回の 「パパが教わった船乗りカレーはなんにでも合うんだ」 のセリフではないでしょうか。

そんなお父さんへの想いが船、さらには制服への執着に表れているように思いますし、渡辺さんにとって船とは、「単に海沿いの街に住んでいるから身近である」という以上に特別な存在なのではないでしょうか?

f:id:tondol:20171126184834j:plain Aqours「未来の僕らは知ってるよ」ジャケット (赤丸部分は筆者加工)

渡辺さんのトレードマークである錨(いかり)は、スカンジナビア号を長らく内浦の地につなぎ止めていた錨 に通じるのかもしれませんし、渡辺さん持ち前の人当たりのよさで誰かと誰かをつなぎ止める絆――つまりは人間関係のアンカーポイント――そんなところに通じているのかもしれませんね。 *2

おわりに

そんなこんなで、妄想多めで「P.S.の向こう側」とスカンジナビア号について書かせていただきました。 個人的には、劇中でもそんな渡辺さんの船に対する気持ちだったり、スカンジナビア号の思い出だったりに触れる回があっても悪くないんじゃないかと思っています。

沼津や内浦の風景を知った上で聞いてみると、ラブライブ!サンシャイン!!の楽曲には沼津らしさ、内浦らしさがたくさん詰まっている ことに気付かされます。 皆さんも是非内浦を歩いてみて、これまでにないサンシャイン楽曲の聴き方 を発見してみてください。

明日の担当は @mtane0412 さん です。よろしくお願いします!!


P.S. ここまで読んでいただきありがとうございました。 *3

参考リンク

*1:なんというか、ラブライブ!というプロジェクトの根幹は楽曲だと信じているので、こういう人に薦めづらい楽曲の収録方法は正直なんとかして欲しいという気持ちです。 2nd ライブツアーの映像ソフトが発売されればもう少し紹介しやすくなるとは思うのですが…… 最初のリリースからしばらくしたらベストアルバムに収録してくれるとかだと非常に嬉しいのですが、商業的にやはり難しいのでしょうか。辛いですね。

*2:文章をあらかた書き終えてから、曜ちゃんのシンボルマークが錨ではなく船のマークだと気づいたのですが、「P.S.の向こう側」も含め、衣装やVJなどに錨のマークがよく出てくることは事実なので勘弁して欲しいという気持ちでおります。

*3:「P.S.の向こう側」のコーレスに「ありがとう」があるせいでよく『P.S.ありがとう』と言い間違えてしまいがちなのですが、奇しくもこの記事をアップした12/2はPileさんの武道館公演の日でもあります。現地参加予定なので楽しみです。

楠田亜衣奈さんソロデビュー2周年に寄せて

はじめに

先日、いつものようにTwitterを観測していたところ、 声優オタクは演者のパーソナリティーありきで楽曲やトークを聞いてエモくなるからキモい みたいなツイートが流れてくることがあり、個人的に納得する部分がめっちゃありました。

このツイートにある通りで、キモ=オタクって純粋に楽曲だけでエモくなるわけじゃないんですよね。 そこに至るまでのコンテキストとか、それを歌っている人自身の言葉とか姿勢とか、そういうものを全部ひっくるめてエモくなったり好きになったりする。

じゃあ逆に、コンテキストなしでエモくなるのってどういう場面でしょうか?

アニクラでそれまで何も知らなかった曲をいきなり聞いてエモくなったら、それは純粋に楽曲の力でエモくなったって言えるのかもしれないですよね。 でも、そういう曲だってその後色々コンテキストを踏まえていったら、たぶんもっとエモくなるわけじゃないですか。 例に挙げるなら、僕にとっては 僕らは今のなかで はそういうタイプの楽曲だったんですよね。

アニクラで何回か流れてくる中で純粋にいい曲だなって思ったのが最初だったんですが、知り合いに薦められてアニメを見て、気づいたらラブライブ!自体にどっぷりハマっていて、最終的に自分の中でめちゃくちゃコンテキストの詰まった1曲になっていきました。

そもそも、アニソンとかキャラソンみたいなものって、 コンテキストを共有することで生まれる楽しさを前提に作られているんじゃないか と思ったりもします。 アニメとかを見ていて、1話ではまったくピンと来なかった主題歌が話数を経るにつれて自分の中でだんだん特別な曲になっていって、気づいたら大好きになっていたような経験、これを読んでいる皆さんにはありませんか?

同じようなことがアーティストの楽曲でも起こることがあります。

声優さんがソロデビューして、色々シングルやらアルバムやらを出して、数年後に憧れのホールの舞台とかにそのアーティストさんが立つようになったとしましょう。 そこで歌われたのがソロデビュー発表当時に歌われたいちばん初めの楽曲だったら、デビュー当初からちょくちょくイベントに参加していたオタクからしたらめっちゃエモいじゃないですか。

なんでこういう序文を書いているかというと、これから 楠田亜衣奈さんという声優アーティストさんの話をしようとしている からなんですね。

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楠田亜衣奈さんの2ndライブツアーの最終公演が8月10日にあったんですが、その会場が本人やファンにとっては悲願とも言える、中野サンプラザという過去最大規模のコンサートホールでした。 詳細はウェブに上がっている 各媒体のレポート をご覧いただくのがベストかと思いますが、これまでに出た全楽曲を全部歌い切るというライブ内容で。 そのセットリストの1曲目が、先述したようにソロデビュー発表当時に初披露された楽曲、 トドケ ミライ! という曲のアコースティックアレンジだったんですね。

端的に言って、 コンテキストで楽曲を聞いているようなキモ=オタクたちを全員殺すぞ という気概が感じられて大変よかったです。

わたしは無事死にましたが、参加された皆さんはどうでしたか?

楠田さんが2015年の10月にソロデビューされてから、1stミニアルバム「First Sweet Wave」、2ndアルバム「Next Brilliant Wave」、3rdアルバム「カレンダーのコイビト」と3枚のアルバムがリリースされました。 この3枚のアルバムをめぐる詳細なタイムラインについては 先日書いたクソ長い記事 を参照してもらえたらと思います。

アルバム3部作と今回のライブツアーで、ソロプロジェクトとしてのひとつの区切りが付いたんじゃないか、というのは自分の中でずっと考え続けていたことでした。

特に、3rdアルバムの表題曲 カレンダーのコイビト は、ある意味 "究極のやつ出ちゃったな" という感覚が個人的にありました。 究極のやつが出ちゃったせいで、正直言うと、2018年春に出ると言われている1stシングルの内容がまったくもって予想できていません。

そういった個人的な事情もあり、2ndライブツアーが無事大団円を迎え、演者もファンも一息付いているこのタイミングで、楠田さんのアルバム3部作についてまとめておきたいと思い、 Anniversary の日に記事を書くことにしました。

メインストーリーのこと

1stアルバムの表題曲 First Sweet Wave という曲は、 デビューのドキドキを恋愛に置換えて描かれた曲 だと当初から雑誌等のインタビューで言及されており、また、2ndアルバムの収録曲 Infinite MemoriesFirst Sweet Waveの歌詞の延長線上にある ということが同様にインタビューなどで語られていました。

この2曲に関しては、作詞・作曲・編曲に関しても完全に同じチーム(こだまさおりさん・山田貴弘さん・鈴木daichi秀行さん)で制作されているという共通項も存在しますね。

曲の歌詞に着目してみると、これから2人の関係性を始めるために一歩踏み出す内容の First Sweet Wave に対し、 Infinite Memories では "アルバムをめくっていく" という形でこれまでの2人の思い出を振り返る様子が描かれていました。

コタエあわせは あとまわしなの
キミへ踏み出せ! Sweet Step

First Sweet Wave

めくる めくる キミのアルバム 何ページ目から
いつも いつも となりに写る わたしがいる?

Infinite Memories

ソロデビューからの活動という文脈で歌詞を読み解くならば、1stミニアルバムが発売され楽曲がCDという形で広がっていく様子を 甘い波 にたとえていたり、楠田さんのアルバムCDが増えたことをフォトアルバムにたとえていたりとなかなかお洒落な歌詞の構成になっています。

一方で、ソロデビュー云々のコンテキストを一旦無かったことにしてこれらの歌詞を読み解こうとするならば、 First Sweet Wave で出会った恋人同士の関係性がだんだんと深まり、 Infinite Memories ではフォトアルバムを見ながら過去を振り返る様子が描かれている、という風に解釈できるでしょう。

この観点で2曲を対比してみると、そこにはざっくり言って 2つの要素: 時間の経過関係性の深化 があるように思います。 また、どちらの曲にも過去や現在だけでなく、 未来に言及している という共通点もあります。

明日変わりそうな 毎日で待ってて

First Sweet Wave

絶対最強の愛になる! はてしない未来ごと 約束しようね
...
共有できる毎日のなかで 待ち合わせしよう これからも

Infinite Memories

First Sweet Wave の歌詞で表現されているのは、主に今現在のドキドキした心情なのですが、Cメロではそれを補足する形で、不確実性の高い未来に言及するフレーズがありました。

一方 Infinite Memories では、過去の思い出を振り返りながら、これからの毎日も一緒に過ごしていこうという意思が強く表現されています。 この2曲の歌詞と時間軸の関係を図示すると、次のようになります。

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では、カレンダーのコイビトの歌詞を、ここまでの解釈に則って見ていくとどのようなことが言えるでしょうか。

早速引用しますが、1Aメロの次のフレーズではこれからの1年に言及しています。

想像して? 1年分の、記念日じゃない日も全部
まだ誰も知らない未来 まずはふたり占めしよう

一方、2Aメロではこれまでの1年に言及しています。

覚えてる? 1年前の、同じ日は何をしてたっけ
こんな今日に出会えてること あの頃のふたりにはヒミツ

この部分だけ見るならば、カレコイが言及する時間軸上のスコープは1年前から1年後ということになります。

しかし、ここで改めて考えたいのですが、この歌詞にある "今日" とは、歌詞の主人公たちにとってのどの時点のことなのでしょうか?

First Sweet WaveInfinite Memories は、関係が深化していく中のある時間軸上の1点での心境を歌う内容でした。 一方、 カレンダーのコイビト で歌われる歌詞は、2人の関係が続く限り、 人生のあらゆる時点で成り立つ内容になっている ように思われるのです。

また、 First Sweet WaveInfinite Memories は恋愛を描いたものとしても、ソロ活動におけるファンとの関係性を描いたものとしても読み取れる歌詞でしたが、 カレンダーのコイビト に関しては、後者の解釈はあまり似つかわしくないように思います。

この曲の歌詞で描かれている "ふたり" の関係性は重すぎて、もはや "コイビト" が家族になって一緒に過ごす何十年もの人生を描いた歌詞としてしか解釈できないと思っています。 ちょっと陳腐なフレーズになってしまうことを承知で言いますが、 カレンダーのコイビトって人生そのもの じゃないですか?

ここまでの解釈を、 First Sweet WaveInfinite Memories と同様に同一の時間軸に載せてみると下図のようになります。

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ここでわたしが主張したいのは、次の3点です。

  • First Sweet WaveInfinite Memoriesカレンダーのコイビト の3曲は、主人公である2人の関係性が深まっていく様子を描いた3部作として解釈することができる
  • First Sweet WaveInfinite Memories は、あるタイミングの主人公2人の心境を描いた歌詞になっている
  • カレンダーのコイビト の歌詞はある時点以降の任意のポイントで成立する内容になっているため、汎用的であり、実質人生

ところで、中野サンプラザ公演の直後に放送されたくす×くすハウスの第38回では、楠田さん本人からセットリストの順番について次のような言及がありました。

「First Sweet Wave」のあとに、ちょっとしばらくしてから「Infinite Memories」が来て
最終的に「カレンダーのコイビト」が入ってくるんすよ
その3つは絶対にこの順番じゃないと嫌だって決めていて

くす×くすHOUSE 第38回

こうした発言の裏にどういった解釈があるかは定かではないものの、楽曲に対して抱いているイメージという意味では、ここで書いたようなことと多少なりとも通じる部分があるのかもしれない・・・と思ったりもしました。

これを読んだ皆さんは カレンダーのコイビト ってなんだと思いますか?

サイドストーリーのこと

楠田さんのソロプロジェクトにおけるメインストーリーがやがてコイビトになる2人の人生を描いたものであったとするならば、サイドストーリーとはどのようなものでしょうか?

それは端的に言って、 "約束" というキーワードで繋がってきた、演者とファンの関係性だとわたしは思っています。

ここで、 "約束" という歌詞を含む楠田さんの曲を並べてみます。

はてしない未来ごと 約束しようね

Infinite Memories

次の約束まで成長しあう指切り

POWER FOR LIFE

全開ずっと Try×3 まだまだ止まらない約束

ウェルカム・フューチャー

来年もここで待ってるからね
約束しようね 輝く君の笑顔大好き

Anniversary

楠田さんのライブに参加されたことのある方ならご存知かと思いますが、POWER FOR LIFEやウェルカム・フューチャーには引用したフレーズのところで指切りをする振り付けがあります。 こうした振り付けがあることは、これらのフレーズを大切にステージを作り上げている証左ではないでしょうか。

また個人的に思い出されるのは、1stライブツアー「Next Brilliant Wave」の東京公演における次のような楠田さんのMCです。

みんなが環境の変化とかで、一度イベントから離れてしまうことがあるかもしれないけど、わたしはいつでも戻ってこれるように歌い続けます。
ふとしたときに帰ってこれるような、そんな場所を作りたいと思います。
わたしはここに立っています。

このときに宣言された "約束" は、およそ半年後の「Eternal Precisous Wave」記念ライブで果たされたのでした。

約束、ちゃんと守ったでしょ?

こうしたこれまでのコンテキストを振り返ると、 "約束" という言葉は単に歌詞によく含まれているフレーズという以上の意味があるような気がしてきます。

"約束" というキーワードこそないものの、個人的に昔からエモいと思っているのが First Sweet Wave のこのフレーズです。

明日変わりそうな 毎日で待ってて

ソロデビュー当時のリリイベ等で初めてライブでこのフレーズを聞いたときは、まだFSW以降のソロ活動がどのように進んでいくのかが分からない時期でした。 きっとこれから色々なことが変わっていくんだろうけど、まだ何もわからない、その不確実性がよく表れていた歌詞だったと思いますし、それを聞くファンとしての心情も同じだったんじゃないかと思っています。

あれから2年が経って、ソロデビュー当時の "明日" からだんだん毎日が変わっていったことを、今の僕らは知っているんですよね。 節目節目のライブで度々披露されながら、歌われる度に新たなコンテキストが生まれて、着実にその思いを増してきた、そんな曲になってきたような気がしています。

おわりに

今回のエントリーでは、 First Sweet WaveInfinite Memoriesカレンダーのコイビト という3つの楽曲に対し、ライブやイベントのコンテキスト抜きでもエモい曲なんだよ、というところを紹介してみました。 逆に、ライブやイベントのコンテキスト込みで言うなら、やっぱり "約束" というワードは外せないよね、という個人的な楠田亜衣奈さんのソロプロジェクトに対する思いも共有してみました。

なんだか取り留めのない内容になっていましたが、伝えたかったことの5%くらい伝わっていたら嬉しいです。 個人的には他の楽曲に対してもくすぶっている思いがあるので、その内うまく言語化できるようになったらお伝えできたらいいなと思います。

そんなわけで、本日は10月7日。 楠田亜衣奈さんのソロデビュー2周年 です。 VAPさんより中野公演で披露された トドケ ミライ! のアコースティックアレンジ音源 も配信されておりますので、ぜひぜひそちらもダウンロードしてみてください。 来年には1stシングルも発売されるということで、これからも色々な展開を見せてくれそうな楠田亜衣奈さんのソロプロジェクトをよろしくお願いいたします。

わたしからは以上です。

The LoveLive! Must Go On

12/27 10:45 末尾に追記しました。

この記事は、ラブライブ!Advent Calendar 2016 25日目の記事として公開されました。

www.adventar.org

突然ですが、 ラブライブ!は好きですか?

μ'sやAqoursのことは大好きですか?

今年ラブライブ!というテーマでAdvent Calendarを作ったのは、端的に言うなら、自分以外のその 「好き」の気持ちが知りたいから でした。

1日目の記事に書いたように、今年2016年は、 μ'sがファイナルライブを開催し、Aqoursが本格的に活動を開始した年でした。

いまだからこそ、書かなければならないことがあると思いました。 いまだからこそ、書かなければならないことを抱えている人が、きっとたくさんいると思いました。

結果的に総勢21人の方にご参加いただき、様々な視点でラブライブ!について語っていただいたり、ラブライブ!をテーマにした確率論やソフトウェアに関する記事も投稿いただいたりしました。 若干まだ1記事だけ未完成のものもありますが 、きっと年内には投稿されることでしょう!

本当にありがとうございました!

最後なので、今回は少し大げさに ラブライブ!って何だ?」 というテーマで書きたいと思います。

ラブライブ!って何だ?

アイドルマスターでもなく、シンデレラガールズでもなく、セブンスシスターズでもなく、 「なぜラブライブなのか?」 が、わたしにとっての長い間の疑問でした。

実は、このテーマで文章を書くのも初めてではありません。 下のリンクは、2年前に書いたラブライブ!に関する記事です。

なぜラブライブ!が流行るのかというハナシ

このときに挙げた差別化要因は、

  • 男性がほとんど登場しない世界
  • 9人という人数
  • ガバガバな設定
  • 畑亜貴と他作曲陣による楽曲
  • ご都合主義的展開
  • 2次元と3次元を繋ぐライブ演出

というものでした。

また、下のリンクは、去年書いたラブライブ!に関する記事です。

tondol.hatenablog.jp

この記事では、次の項目を差別化要因に挙げました。

  • 体育会系的・全体主義的なストーリー
  • 歌詞やキャラ付けがもたらす野暮ったさ
  • キャスト・キャラクターの両方に通じるコンテキスト

しかし、差別化要因をいくつか挙げたところで、冒頭の疑問に答えることはまだできていません。 答えは結局言語化できるようなものではないんじゃないか?とも思い始めています。

いかさこさんが、24日のAdvent Calendarで言及した キラキラした "何か" 。 わたしがずっと探し求めているのは、その "何か" の正体なんだと思います。

とは言いつつも、「言語化できません」で終わってしまっては今回記事を書く意味が無いので、2点だけ、最近考えたことを共有したいと思います。

リフレインの物語

μ'sの物語における、もっとも大きな伏線の解決とは、テレビアニメの第13話で、3人から9人へとメンバーを増やしたμ'sが、始まりの曲 START:DASH! を歌ったステージにあったのではないかと思います。

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言うまでもなく、この状況自体が第3話の誰も観客のいなかったステージの繰り返しでもありますし、ダメ押しとして、第3話で語られた穂乃果の宣言がモノローグとして印象的に挿入されます。

このまま誰も見向きもしてくれないかもしれない。
応援なんて全然して貰えないかもしれない!
でも、一生懸命頑張って、私たちがとにかく頑張って届けたい!
今、私たちがここにいる、この思いを!

そもそものことを言えば、この文章は、ラブライブ!のプロジェクト開始当初に ウェブサイトに掲載されたプロローグの文章 でもありました。

また、2期の第13話、解散を決めたμ'sが屋上でこれまでの活動を振り返った後、穂乃果の目に映ったのは、1期のいちばん最初に "やり遂げよう" と誓った2年生3人の姿でした。

ねえことりちゃん、海未ちゃん。
……やり遂げようね、最後まで。

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直後に流れる Oh, Love & Piece! に、当時目頭を熱くしたファンの方は多いのではないでしょうか。

上記以外にも、2期の第12話では1期のオープニング曲の背景がラブライブ!本戦のステージだったという伏線を回収し、オープニングと同じ衣装でステージに立つμ'sの姿が描かれました。 テレビアニメの1期第8話・2期第9話で挿入された 僕らのLIVE、君とのLIFE や、 Snow halation のステージも、アニメ化される前からラブライブ!を応援してきたファンにとっては、これ以上ない憎い演出として目に映ったことでしょう。

現実においては、μ'sファイナルライブのステージで初披露された MOMENT RING に触れないわけにはいきません。 これまでのアニメにおける各メンバーのキャラクターを象徴するポーズや、シングルのMVにおける特徴的な振り付けなどが次々に披露され、6年間のμ'sの姿が散々目に焼き付いているファンにとって、それはまるで 死の直前に見る走馬灯 のようでもありました。 MOMENT RING のステージを肉眼で見たあの瞬間以上に、μ'sを好きでいてよかったと思ったことはありません。

アニメの演出にまで踏み込んでみると、ここまでに挙げた物語上大きな意味を持つ "リフレイン" 以外にも、随所随所にコンテキストを感じられるような小さな "リフレイン" が隠れていることがわかります。


【ラブライブ!MAD】μ'sic → Touch me【LOVE LIVE!】

このMADは、有志の方が制作されたものですが、言葉を尽くして説明するよりもこれを見た方がよっぽど納得していただけるかと思いますので、ここで紹介させてください。 *1

ところで、ここで挙げた "リフレイン" とはμ'sの物語だけが持つ特徴なのでしょうか? わたしはそうは思いません。 Aqoursの物語においても、 "リフレイン" を意識した演出はいくつか登場しています。

ひとつは、第12話における、東京から沼津に戻る途中、千歌が羽を拾うシーン。

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この羽は言うまでもなく、μ'sのメンバーがテレビアニメ2期のED曲 どんなときもずっと で最後にキャッチしていた羽に違いありません。 μ'sが何も残さなかったことの意味を千歌が理解したからこそ、羽はあの場所に舞い降りた。 そのことは、これまでも散々語られている通りです。

もうひとつは、第13話における MIRAI TICKET の導入部分。

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Aqoursが歩んできた道のりを観客に紹介するミュージカルパートは、誰にとってもわかりやすい繰り返しの演出として理解されたことでしょう。 この演出については賛否両論ありますが、そのあたりは近日中に 渡辺曜 をフューチャーした記事を執筆し、その中で言及する予定でおります。

* * *

ここまでで、μ'sにもAqoursにも共通して、演出的に強く意図された形での "リフレイン" が頻出していることを説明しました。

エモはコンテクストから生まれる という原則に則るならば、ラブライブ!とは繰り返しの構造を活用することにより、観客の 感情的な高まりを最大化しようとしており、なおかつそれを自覚的にやっている ということが言えるのではないでしょうか。

慣性やしがらみからの脱却

劇場版 ラブライブ! The School Idol Movie では、μ'sの解散という選択と、周囲からの期待の狭間で悩むメンバーの姿が描かれていました。

昨年の12月、ファイナルライブの存在が発表されてから、今年 "その日" を迎えるまで、一体何をするべきなのか、どのような気持ちで迎えるべきなのか、わたしたちもまた、劇場版のμ'sメンバーが悩んでいたのと同じように考え続けていた気がします。

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結局大した答えは出せなかったけれども、わたしは、なんだかそんな風景自体がラブライブ!の世界と繋がっているみたいで、なんだか嬉しく思ったことを覚えています。

zephiransasさんはご自身の記事 で、劇場版の 「跳べる」 というセリフは、μ'sとしての活動が終わったあと、これからも続いていくであろう穂乃果たち9人と新田さんたち9人の活動を後押しする言葉だと解釈しておられました。

わたしが 「跳べる」 という言葉に抱いた印象はそれとは少し違っています。

「跳べる」 という言葉は、ラブライブ!のコンセプトを端的に表現しているのではないかとわたしは思っています。 それは、慣性やしがらみに縛られずに 本当にやりたい!楽しい!と思えることを全力で続けること ではないでしょうか。

劇場版において穂乃果たちは、自分たちで決めた 「μ'sを終わりにする」 という約束と、周囲からの 「活動を続けてほしい」 という期待の板挟みになり、身動きがとれなくなってしまいました。

今まで自分たちがなぜ歌ってきたのか どうありたくて何が好きだったのか。
それを考えたら、答えはとても簡単だったよ。

女性シンガーが示唆した "答え" とは、「楽しかったからこそ、スクールアイドルをこれまで続けてこられた」ということに気づき、 スクールアイドルに憧れた当初の原点に立ち返る ことだったのではないでしょうか。

物語の後半で、穂乃果はひとり悩みながらも、こうした女性シンガーからの助言もあり、 "本当に楽しいライブ" へとたどり着きます。

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それは、μ'sを取り巻く しがらみからの脱却 であり、 誰も見たことのない点X へと視聴者を連れて行く、まさにラブライブ!らしい結論でした。

しがらみからの脱却という点で言えば、μ'sがファイナルと銘打ったライブを迎えられたこともそうです。

商業的に利益を生むことを考えるなら、ミュージックステーション紅白歌合戦への出演を果たしたモンスターのようなグループが、人気の絶頂で解散するなんていうのは、本来あり得ない話なんじゃないかと思います。

更なるアニメシリーズを作るなり、ライブを続けるなりすれば、人気のピークこそ過ぎてしまうにしても、きっともっと稼げるに違いないのに。 それでも終わらせたということは、μ'sというユニットのゴールが、単なる利益以外の別のところにもあったことを示す、何よりの証左ではないでしょうか。

* * *

ところで、μ'sにとってのしがらみが、どんどん大きくなっていく周囲の期待であったとするならば、Aqoursにとってのしがらみとは、 何をするにしてもμ'sと比較される、悪い意味での注目度の高さ にありました。

特に、プロジェクトが始まった当初は、Aqoursがまだほとんど目立った活動をしていないにも関わらず、ラブライブ!つながりで既に多くのファンを得ていることに対し、批判する声も見られたように思います。

ただ、個人的な意見として、そうした批判の声すらも、更なる力に変えていくだけの底力を持ったコンテンツがラブライブ!だと思っています。

仮に、μ'sにとってのハードルが、キャストやプロジェクト自体の 知名度の低さ であったとするならば、Aqoursにとってのハードルとは、現実の実績に見合わない 高すぎる知名度 にあったと言えるでしょう。

そのハードルの高さこそが、逆説的に Aqoursラブライブ!の第2の主人公たらしめている ように思われてならないのです。

現実におけるAqoursの立ち位置を知ってか知らずか、テレビアニメの展開においても、当初Aqoursμ'sの背中を追い続けていました 。 μ'sがあれだけの人気を集めるスクールアイドルになれたのは何故なのか? ーー その理由をあの手この手で見つけようとしていたように思います。

恋になりたいAQUARIUM のCW曲、 届かない星だとしても では、そんなAqoursの心情が歌詞によく表されています。

憧れるってステキだよ?
とにかくぜんぶ真似したい

ラブライブ!サンシャインの第12話で、Aqoursはμ'sが音ノ木坂に何も残さなかったことを知り、μ'sの背中を追いかけるこれまでの道とは違う道へと走り始めました。

この物語の先で、Aqoursが一体どんな点Xへとわたしたちを連れて行ってくれるのかは、 きっと、これからのラブライブ!プロジェクトが教えてくれることでしょう。

Aqoursが与えてくれる視点

これまで、ラブライブ!の物語とはすなわち、μ'sの物語でした。 だから、ラブライブ!について語ることというのは、μ'sについて語ることとほぼ同義でした。

しかし、Aqoursが本格的に活動を始めたいま、わたしたちは、ラブライブ!というプロジェクトを μ'sとAqoursの両面から観察できる ようになりました。

Aqoursがμ'sというしがらみから離れ、自らの道を確立していくにつれ、2つのグループに共通する "ラブライブ!性" とでも言えるものが、今後じわじわと見えてくるようになるのでしょう。

ラブライブ!は、点から線になりました

今後、ラブライブ!を構成する点がどんどん増えていくならば、きっと点や線だけでなく、平面や立体としてラブライブ!を見ることも可能になるでしょう。 そうなったときようやく、μ'sの歌った SUNNY DAY SONG のコンセプトが現実のものになったと言えるようになるのではないでしょうか。

おわりに

この記事では "リフレインの物語""慣性やしがらみからの脱却" という2つの視点で、ラブライブ!ラブライブ性とはどこに由来するのか?という疑問に答えようと試みました。 これまでの試みがそうであったように、やはりこの記事も、それだけではラブライブ!の本質には迫れないという結論になってしまうのですが・・・。

ただ、Aqoursというユニットが本格的に活動を始めたことで、その分だけ、μ's=ラブライブ!だった時代よりも多面的な考察ができるようになるだろう、という今後の展望を示しました。

* * *

最後に、 Angelic Angel からいちばん好きな歌詞の一節を引用させてください。

時間はとめられないと知って
君と早く会いたかったよ
届けたい言葉が音に溶けて Call Angel

この歌詞は、プロジェクトの途中からμ'sのことを知り、アニメを見たりイベントに足を運んだりするようになったファンの心情に驚くほど一致すると思うのです。

実際、ファイナルライブの現場に、プロジェクトの開始当初からμ'sのことを知っていたファンの人ってどのくらいいたのでしょう。 きっと数えるほどしかいなかったんじゃないかと思います。

それ以外の人にとって、μ'sはきっと何よりも 「早く会いたかった」 存在だったのではないでしょうか。

こんなに早くファイナルの日が来るのなら、パシフィコの3rdライブに行きたかった。 アニメの1期をリアルタイムに見たかった。 アニメ化の喜びを分かちあいたかった。 1stユニットシングルやソロシングル発売当初のライブを生で見たかった。 今はない横浜BLITZで、伝説の始まりに立ち会うファンのひとりでいたかった。

そういう願望を少なからず抱いていたファンにとって、 Angelic Angel の歌詞はあまりにも直接的に響きました。 *2

そんな切なさや楽しさを折り込みながらも、5万人の思いが音に溶けていった 2016年4月1日 。 あれから8ヶ月余り、まもなく2016年が終わろうとしています。

Aqoursと、それぞれの道を歩み始めたμ'sのキャスト9人の活動が今後も輝かしいものでありますように。 そんな願いを込めつつ、今回は筆を置きたいと思います。

絶対に横浜アリーナに行こうナ。 *3 来年も何卒よろしくお願いいたします。

* * *

12/27 10:45 追記

ブックマークコメントに関する言及をさせてください。

ぱいちゃんとえみつんの2人による「μ'sは解散じゃない」という最近の言及があるのに、「解散」という言葉を使っているようではラブライブ!の事は深く理解できないのではないか

はてなブックマーク - kei-anのブックマーク - 2016年12月27日

これ読んだ瞬間に「言葉遣いが迂闊だった」と思ったのですが、ただ、個人的に "解散" という言葉を使うのが「悪」というムードもどうなの?という気持ちがあります。 少なくとも、テレビアニメの展開においては、9人は "μ'sはおわりにします" と言っているわけで、それは解散以外の何物でもありませんよね。

現実の9人の関しては、たしかに新田さんやPileさんが解散を否定するような発言があったのは事実です。 また、そういったマインドによって救われるファンが多数いるのも承知しています。 わたし自身、μ'sが復活して、今度こそ潮風公園で生の LONELIEST BABY を歌ってくれたら・・・と思ったことは数え切れないくらいありますし。 一方で、三森さんはラジオ等で「解散」という言葉をストレートに使われていたようにも記憶しています。

もちろん、デリケートな話題ですし、この言葉を使うのは避けられるなら避けるべきだったと反省しています。 ただ、言葉狩りのごとく "解散" の言葉を避けようとするとも、逆に本質から離れてしまう恐れがあるのではないでしょうか。

わたしたちはいつかμ'sの活動休止の事実から時計の針を進めなければならない、じゃなければラブライブ!的ではないという個人的な思いもあります。

大事なのは、μ'sのこと、μ'sを好きだった事実を忘れずに前に進むことだと思います。 そのことは、4月1日に起こったことを「解散」と言おうが「活動休止」と言おうが変わらない、というのがわたしの意見です。

もちろん、「お前ラブライブ!ぜんぜん理解してねーよ!」という反論自体は大歓迎です。 よろしくお願いいたします。

*1:個人的には、BGMに touch me のremixを選んだセンスといい、音との同期といい、本当素晴らしい動画だなあ、、、と感服しております。数あるラブライブ!二次創作動画の中でも、いちばん好きなMADです。

*2:μ'sのことを最初から応援できたらよかったのに・・・と後悔しているファンにとってみれば、Aqoursの存在は、ある意味ひとつの受け皿としての役割を果たしているのかもしれませんね。

*3:1次先行も2次先行も盛大に落選しました。誰か助けてください。

楠田亜衣奈さんのソロ・プロジェクトを振り返る〜2年目のコタエあわせ〜

この記事は、ラブライブ!Advent Calendar 2016 17日目の記事として公開されました。

www.adventar.org

16日目の記事は 踊り出す世界、またはスケルトン - raingamesの日記 でした。 ラブライブ!とはインド映画である” という持論を持つわたしとしては、共感しながら読ませていただきました。 *1 意図していなかったとは言え、楠田さんテーマの記事で挟んでしまいすみません!

目次

はじめに

世はまさに声優アーティスト戦国時代。

国内の様々なレーベルから2016年だけでもたくさんの声優さんがソロ・デビューしました。 一方、μ'sのメンバーに目を向けてみると、昨年末にソロ・デビューを発表した久保さんを含め、徳井さん以外の 8人が既にソロ・デビュー を果たしています。

これだけたくさんの方々がソロとしての活動を精力的に行う中で、 新たにソロ・デビューをする意味とは何でしょうか? それぞれの声優さんのファンは、ソロとしての楽曲や活動をどのように受け止めているのでしょうか?

もちろん、商業的な意味で天下り的に決まる部分もあるのでしょう。 しかしながら、せっかくデビューするのであれば、するだけの理由が欲しい。 「ソロ・デビューをしてよかった」 と、声優さん本人もファンも言えるような活動であってほしい。 恐らく、ファンの誰もがそのように感じているはずです。

μ'sメンバー個人のソロ・プロジェクトは、あえて徳井さんもそのカウントに入れるならば、 9人9色の展開を見せているように思います

楽曲の持つ力と圧倒的な表現力で、タイアップなしで誰よりも早く武道館への階段を駆け登った 内田彩さん

多彩かつ強力なタイアップを引っさげ、まるでエンターテイメント・ショーを見ているかのような世界を舞浜に作り上げた 三森すずこさん

ただひたすら真っ直ぐに、音楽への想いを楽曲にぶつけ、歌を歌う喜びをホールに響かせた 新田恵海さん

声優として、アフレコやキャラクター・ソングの仕事に全力を注ぎ、あえてソロ・デビューはしないと公言している 徳井青空さん

南條愛乃さん については、先日のAdvent Calendarであまだむさんが 熱い文章 を投稿してくださいました。 *2

また、15日のAdvent Calendarでは、サイコミュさんが 楠田亜衣奈さんの魅力 について語ってくださいました。

若干趣旨が被ってしまい恐縮ですが、この記事も、 楠田さんのソロ・アーティスト活動 をテーマにしたいと思います。

www.vap.co.jp

ソロ・デビューから1年が経過 し、3rdアルバムの発売を来年の2月に控えたこのタイミングで、この1年間の活動をファンとして見てきた中で感じたことや、考えたことを少しでも文章の形で残しておきたいと思ったからです。

将来の自分のために残す、という部分もありますが、あわよくば、これから楠田さんの楽曲を聴いたり、ライブ・イベントに足を運ぼうとする 新しいファンの方に読んでいただけたら と思っています。

タイムライン

まず、改めてソロ・デビューからの軌跡をいくつかのチャプターに分割しながら書いてみたいと思います。

ソロ・デビュー前夜のこと

楠田さんのソロ・デビューが発表されたのは、2015年5月9日の くすくすくっすん☀さんくっすん祭り 東京公演でのことでした。

ソロ・デビューの一報の後、その場で披露されたのは10月に発売されるデビュー・ミニアルバムの1曲目、 トドケ ミライ! でした。

イベントの後、楠田さんはこのようなツイートをしています。

楠田さんがデビューへと辿り着く道のりは、必ずしも平坦なものではありませんでした。 むしろ、その途上には 険しい障害物がいくつも立ちはだかっていた 、とすら言えるかもしれません。

ハッキリ書いてしまいますが、他の声優さんと比べたときに、楠田さんはもともと歌唱力が突出しているというタイプではないと思います。

実際、渡部優衣さんと一緒に毎週放送しているラジオ「楠田亜衣奈渡部優衣の気分上等↑↑」(通称アゲラジ)では、下記のような発言をされています。

わたし、実は声優のお仕事を初めていちばん最初の仕事が歌だったの。歌のレコーディングが最初の仕事で。
レコーディングなんてしたことないから、どうレコーディングしていいのかもわからないし。
プロデューサーの人に「君歌ヘタだったんだね」って言われたのを覚えてる。
そのときに、もっとがんばらなきゃって改めて思って、すごく色々勉強したのを覚えています。

アゲラジ 第34回(2015年5月26日放送)

そんな楠田さんにとって、最初にソロ・デビューの計画が持ち上がったのは、 2015年5月よりももっと前 のことでした。

kai-you.net

2013年9月に、以前の所属事務所であるJTBエンタテインメントのグループ内レーベル JTB MUSIC のソロ・アーティスト第1弾として楠田さんの名前が挙がり、 「2013年冬にデビュー」 するという発表がありました。

ところが、実際にJTB MUSICからデビューしたのは タビカレガールズ というユニットのみで、楠田さんのデビュー計画は一旦立ち消えになってしまいました。 *3

ソロとしてのデビューはなくなってしまった一方で、この時期は、前述のタビカレガールズの一員としての活動や、同年6月に始まったPileさんとのユニット Please & Secret としての活動があり、ラブライブ!以外での歌唱を含むお仕事がたくさんある時期でもありました。

この時期、わたし自身はまだ楠田さんの活動を追ってはいなかったので、正直なところウェブに残っている資料以外では活動の実態をあまり知りませんし、このあたりのことは、いまさら蒸し返す話でもないのかもしれません。 しかしながら「数年前にこういうことがあった」と、ウェブの片隅に情報が残っているくらいならばいいんじゃないかとも思っています。

以前からソロ・デビューの動きはあったんですけど、具体的になったのは比較的最近で。
その間に色んな方がソロ・デビューに向けて動いてくださっていて、いざデビューが決まったときは、感謝の言葉しか出てこなかったですね。

リスアニ! 2015年10月号 Vol.22.2

リスアニのインタビューでも語られているように、最初に楠田さんのソロ・デビューの話が持ち上がってから、実際にVAPからのソロ・デビューという形になるまで、そこには 1年半におよぶ冬の時期 がありました。

そんなコンテキストの中で、2015年のさんくっすん祭りでソロ・デビューの一報がなされたとき、古くから応援しているファンの方や、楠田さん本人の心境がどうだったか、わたしにはなんとなく想像することしかできません。 しかしそれは、少なくない不安を含みながらも、きっと、 春の訪れのように暖かいものだった に違いないと思います。

First Sweet Waveのこと

ソロ・デビューの一報がもたらされた さんくっすん祭り で披露されたのは、楠田さん本人の作詞による トドケ ミライ! でした。

先ほども引用したリスアニでは、 トドケ ミライ! の歌詞に込められた思いについて、次のように語られています。

はじめてファンの方の前で歌う自分の曲でしたので、皆さんへの感謝の気持ちを伝えたかったんですよね。
それで、最初にいただいた歌詞に私の思いも加えていただき、共同作業のような形で言葉を紡いでいきました。
(中略)
1番では『これまで応援してくれてありがとう!』という感謝の気持ちを書き、2番は私の歌で皆さんの日常に大きなパワーを与えたいという思いを表現しました。

リスアニ! 2015年10月号 Vol.22.2

本人の言葉をそのまま借りるならば、 デビュー・ミニアルバムをCDとして聴いたときに、真っ先に流れる曲 に込められていた想いとは、 日頃のファンへの"感謝の気持ち" だった・・・ということになります。

トドケ ミライ! の初披露の後、さんくっすん祭りで最後に歌われたのは、μ'sの、そして楠田さんにとっても原点の楽曲 僕らのLIVE、君とのLIFE でした。

先ほど引用したアゲラジの発言を信じるならば、楠田さんにとっては、この曲は 苦い思い出のある1曲 でもあるはずです。 しかしながら、ラブライブ!での大きなステージを何度も経験する中で、 苦しい中でも着実に成長してきた実感を伴った1曲 でもあったはずです。

ちなみに、 僕らのLIVE、君とのLIFE は、1stミニアルバム・2ndアルバムの サウンドプロデュースを手がけた山田高弘さん が作曲された曲でもあります。

いま振り返ってみると、あの場で 僕らのLIVE、君とのLIFE が歌われたことは、これまで楠田さんが歩んできた 成長の道のりを振り返ること でもあると同時に、これから発売される デビュー・ミニアルバムへの展望を示すこと でもあったように思います。

一方、この日のさんくっすん祭りで最初に歌われたYUIさんの My Generation も、楠田さんの本人の口から何回か語られている、馴染みの深い曲でした。

私はYUIさんがすごく好きで、声優を目指しはじめた16の頃から聴いていたんです。
その時に歌ったのが「My Generation」て曲なんですけど、2番に〈制服 脱ぎ捨てた16のアタシに 負けたくはないから〉っていう歌詞があって、すごく共感していて。
だからデビュー発表をする日に歌いたかったんです。

声優・楠田亜衣奈、初のソロ・デビュー作をハイレゾ配信&インタヴュー - OTOTOY

奇しくも、デビュー・ミニアルバムの表題曲 First Sweet Wave は、 My Generation と同じく 鈴木Daichi秀行さんによる編曲 でした。 *4

わたしは、 16才の楠田さんが憧れたアーティストに楽曲を提供した作家さん が、 楠田さんのソロ・デビュー作に参加されている ということを知ったとき、このソロ・プロジェクトに込められた半端じゃない想いを感じました。 *5 ソロ・デビューの全貌がだんだんと明らかになっていく中で、きっと素晴らしいものが発表されるのだと、たくさんのファンが期待に胸を膨らませていく時期だったように思います。

そうした中、 このソロ・プロジェクトで何を実現するのか? どんなアーティストになりたいのか? という問いに関しては、楠田さん自身も悩んでいたことがいくつかのインタビューから伝わってきます。

たとえば、 アーティストとしてどんな存在になりたいのか? という質問に対しては、次のように答えられています。

それはこれから出てくる気がします。
とにかく楽しくマイペースに、頑張りすぎずにそのときの私を表現できるようなアーティストになれたらなって。
それで自分の感じたこと、見たことをファンの皆さんと共有できたら幸せなのかなって思います。

リスアニ! 2015年10月号 Vol.22.2

また、ソロとしての活動がファンにどのように受け止められるのか、 不安に思っている時期 でもあったようです。

実は不安もあったりしますけど…。
ファンの方々に『こういうアルバムは求めていない』と思われてしまうんじゃないか、とか、今まで何かの役を通して私のことを見てくださっていた方々が"楠田亜衣奈"として私を見たときにどう映るのかな、とか。
そのような不安は何度も頭をよぎりました

声優パラダイスR 2015 Vol.8

そんな中、 First Sweet Waveフラゲ日当日に開催された くっすんサポーター応援会 in サンシャインシティ は、ソロ活動におけるひとつのターニングポイントだったのではないかと思います。 *6

natalie.mu

「果たしてソロとしての楽曲やパフォーマンスが認められるのか・・・?」 という不安の中、大勢が見守る緊張のステージを終え、ピコハンを持って現れた楠田さんは、かわいらしくもありながら、普段よりもずっと頼もしく見えました。

その後、ミニアルバム発売前後のイベントを駆け抜け、翌月の11月に迎えたリリース記念イベント。

このときはまだ持ち曲が6曲しかなかったため、ライブではなく、あくまでも トークコーナーなどを交えたリリース記念イベント という体裁でした。

デビューという大きな一歩を踏み出したばかりで全く不安がないと言ったら嘘になるけど
くっすんサポーターのあなたが応援してくれたら乗り越えていける気がする!!
いや、乗り越えていける!!

First Sweet Wave リリース記念イベント パンフレット

東京と大阪、計6回のイベントを終え、11月22日の大阪ラスト公演のMCでは、次のようなことが語られました。

今後ね、アーティスト楠田亜衣奈としてどうしていきたいですか?ってインタビューがすごく多いんです最近。
正直ね、どうしていきたいかとか、あんまわかんないんですけど、このイベント6回通して感じたことは、「この空間が好き」。
なんかね、楽しいんですよ。
「あたらしくて懐かしくてあたたかい」。
なので、いつまでもこうして、楽しい空間を、楽しい時間を、楽しい想いを共有できる、そんなアーティストになりたいと思います。

それは、ソロ・デビューと First Sweet Wave という作品に対する、 楠田さんなりの"コタエあわせ" だったように思います。

わからないことはわからないと答えながらも、それでもファンと一緒に作る空間が楽しいと言ってくれることが、当時、ひとりのファンとしてどうしようもなく嬉しかったことを覚えています。

Next Brilliant Waveのこと

2016年2月に行われた さんくっすんBIRTHDAY〜27年前の今日、楠田亜衣奈が生まれるってよ〜 というふざけた名前のイベントで、2ndアルバムの発売が発表されました。

さらに、単なるリリースイベントに留まらない正真正銘のライブ(しかも全国ツアー!)が開催されることが発表されました。

BIRTHDAYイベントに関しては、サイコミュさんも言及していましたが、わたしは ナタリーさんのレポート記事にあるこのフレーズ が大好きです。

サポーターとの未来を祝福するアッパーチューン「オーマイダーリン」

楠田亜衣奈、くっすんサポーターと“みんなのお母さん”に感謝届けた誕生日イベント - 音楽ナタリー

あの日、 オーマイダーリン という曲が歌われたときの盛り上がりを、これほどまでに的確に表現するフレーズは他にありません。ありがとうナタリー。俺達のナタリー。

ともあれ、2ndアルバム「Next Brilliant Wave」の報は最高の形でファンに伝えられました。

4月になると、インストアイベントが各地で開催され、真っ先に Inifinite MemoriesPOWER FOR LIFE の2曲が披露されました。 *7

下記のインタビューでは、デビュー・ミニアルバム First Sweet Wave の内容を踏まえながらも、 Next Brilliant Wave では更なる “成長"、"進化” がコンセプトの軸であると語られています。

昨年リリースしたミニアルバム『First Sweet Wave』では"いろんな楠田亜衣奈を見せていく"というのをテーマにしていましたので、今回は"成長"や"進化"を表現したいと思いました。
そこで、これまで私のライブやイベントを支えてくださったチームの皆さんが感じる"いまの楠田亜衣奈"を、いろんな曲で表せたらなと思ったんです。

声優アニメディア 2016年6月号

トドケ ミライ! にファンへの感謝の気持ちを伝えたいという想いが込められていたように、 Infinite Memories にはソロ・プロジェクトで(あるいはもっと前から)ファンと見てきた景色が、 POWER FOR LIFE にはお互いがお互いのサポーターとしてよい関係を保ちながら進んでいきたいという想いが込められていたように思います。

1stアルバムの表題曲『First Sweet Wave』はデビューのドキドキを恋愛に置き換えて描かれた曲です。
今回の『Infinite Memories』や『POWER FOR LIFE』はその延長線にある歌詞になっていて、恋愛ものでありつつ、次のステップを踏み出そうとする前向きな気持ちが描かれています。

B.L.T. VOICE GIRLS Vol.26 |TOKYO NEWS マガジン&ムック

Infinite Memories に関しては、次のようなコメントもありました。

『あっ、イベントのときには、こんなやりとりしたなぁ……』みたいな思い出がよみがえってきました。
今までも不安だらけの私の背中を押してくれたのはファンの皆さんでしたから、そういう気持ちをアルバムの1曲目で歌えたのはよかったと思います。

声優グランプリ 2016年6月号

この言葉を信じるなら、やはり First Sweeet Wave と同様に、 CDを聴いたときに真っ先に流れてくる1曲目 は、 ファンへの気持ちを歌った曲 だった、ということになります。

一方で、本人の前進志向がそのまま楽曲として表現されたのが 進化系HEROINE という、まさに “進化"をテーマにした楽曲 でした。

『POWER FOR LIFE』が応援歌だとしたら、こちらは自分の中につねにもっていたい"信念"の楽曲。
声優を志していた当時の気持ちがよみがえって、もっともっとがんばろうという気持ちが沸き上がってくるんです。
つねに進化し続けたいという私の気持ちがそのまま出ているので、これから先、私の座右の銘は『進化系HEROINE』にしてもいいのかもしれません(笑)

声優グランプリ 2016年6月号

“成長"や"進化” のコンセプトは、ライブのステージにもよく現れていたように思います。

曲全体に振り付けのある楽曲は、1stミニアルバムの トドケ ミライ!HO♡HOLIDAY に、 恋愛対象Countdown内気なバービー進化系HEROINE の3曲が加わり、2ndアルバムまでの 17曲中5曲がダンスありの楽曲になりました

特に、 内気なバービー に関しては、楠田さん本人が振り付けを考えている、ということがインストアイベントで語られていました。

表現という観点で触れるなら、 Next Brilliant Wave は楽曲の幅が広いためか、 楽曲ごとに主人公を想定し、その子になりきって歌う という声優さんらしいアプローチに挑戦されたそうです。

今回のアルバムでは"くっすんらしさ"を見つけられたらいいなと思って、
(中略)
その答えとして、曲に合わせて主人公の女の子を作り、その子になりきって歌うというアプローチに挑戦したんです。

B.L.T. VOICE GIRLS Vol.26 |TOKYO NEWS マガジン&ムック

楽曲やステージ、表現など、様々な面での"進化"が形となって実現された のが、楠田さんにとっての初めてのライブでもある、 Next Brilliant Wave の全国ツアーでした。

忘れられないエピソードとして、ツアーの初回・福岡公演では、 楠田さんからファンに向けての逆スタンド花が会場に飾られる というサプライズもありました。

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このスタンド花に散りばめられたガーベラの花言葉は、 Next Brilliant Wave のコンセプトと同じく “希望・常に前進” でした。

夢のつぼみ の歌詞にある

あなたのもとへ いつでも いつまでも この花を届けるよ

というフレーズをそのまま現実にしたかのようなサプライズに、その場で涙ぐんでしまうファンも多数いたとかいないとか・・・。

“アーティスト楠田亜衣奈"って響きは未だに慣れません。
でも、たくさんの応援がこうしてカタチになっていって。
少しずつ着実に前進しています。
そして、その前進と共に素敵な思い出がどんどん増えていく。
これからの私をつくっていく。
それがとってもとっても嬉しくって楽しくって… もっと!もっと!次へ進みたい!!って気持ちになります。

Next Brilliant Wave ライブツアーパンフレット

ツアーの国内ラスト公演では、こんなMCがありました。

ちょっとつらいことがあったときは、みんなの笑顔を思い出してがんばろうって思えるようになりました。
……みんなにとっても、私がそんな存在になれたらいいなと、心から思っています。

声優グランプリ 2016年8月号

また、記憶だけで書いているので意訳になってしまいますが、このようなMCもありました。

みんなが環境の変化とかで、一度イベントから離れてしまうことがあるかもしれないけど、わたしはいつでも戻ってこれるように歌い続けます。
ふとしたときに帰ってこれるような、そんな場所を作りたいと思います。
わたしはここに立っています。

群青シネマMy yesterdays という曲は、いまから過去を振り返る楽曲だと思っているのですが、その切なげな歌詞が 何らかの事情で現場を離れてしまったファンのことを歌っている ように聞こえることがあります。 そんな楽曲が歌われた後のMCだったので、なんだかジーンとなってしまって、会場を後にしてからも何も言えなかったのを覚えています。

楠田さんはときどき、単なるファンからすると想像もつかないくらい遥か遠くを見ているように感じられることがあり、このときもそんな風に感じました。

楠田さんのソロ・プロジェクトの特色とは?

以上のタイムラインを踏まえ、 First Sweet WaveNext Brilliant WaveEternal Precious Wave という3つの作品と、それに関連するイベントに参加したことで、個人的に思い至った2点の特色について紹介したいと思います。

借りモノを自分のモノへと変えていくこと

楠田さんは、 自分が参加したり観に行ったりしたイベントでよかったと思えるものは、すぐに自分のイベントにも取り入れる 姿勢を持っていると思います。

たとえば、 Next Brilliant Wave のライブツアーでは、 My yesterdays のアウトロで 客席に向かって深く頭を下げる という演出がありましたが、これは飯田さんが自身の tour of KISS3 で披露された演出に近いものでした。

また、ついこの前の Eternal Precious Wave リリース記念ライブでも、 群青シネマMy yesterdays は着席の状態で披露され、 夢のつぼみ では更に “ペンライトを消して聞いてほしい” と楠田さんの口から希望が語られる一幕がありましたが、これも南條さんが 自身のライブツアー において ヒカリノ海 からのバラード曲ゾーンで披露していた演出と同様でした。

万が一、本人がこれを読んだら “ネタばらしするなよ!” と怒られてしまうかもしれませんが、わたし自身は、そうやって他のアーティストさんの演出を取り入れていくことはいいことなんじゃないかと思っています。

事実、例に挙げた2つの演出は、楠田さんの楽曲にもよくマッチしていましたし、特に、 Eternal Precious Wave リリース記念ライブでのバラード曲ゾーンは、初めての アコースティックVer.の披露 でもあったため、立ってサイリウムを振るよりも、座って集中して聴きたいと思っていたファンは多かったに違いありません。

そんな “インプット"と"アウトプット"の関係 について、インタビューで楠田さんは次のように語られています。

今年は舞台やライブを見に行く機会がすごく増えて、”インプット”することが多かったんです。
ですから、来年も引き続きインプットをしつつ、自分の活動にそのインプットを活かしてどんどん"アウトプット"していきたいですね。

声優パラダイスR 2016 Vol.15

タイムラインは戻りますが、 Next Brilliant Wave のツアー最終日となる台湾公演では、すべてのセットリストを終えたあとにも関わらず、 ダブルアンコールの声に応えて楠田さんがステージ上に出てきてしまう というちょっとしたハプニングがありました。

そのときに一体何をやったかというと、

もう歌う曲はないので歌いません!

と宣言した後、概ね次のようなMCと “さんくっすん締め” が披露されたのでした。

正直言っちゃうと、ライブの後の三本締めってあんまり好きじゃないんです。
昔、どのイベントとは言わないけど、アンコールで出ようとしたら三本締めで締められちゃったこともあったし……。
だから、みんなで楽しくイベントを終われるような締め方を考えました!

代わりに披露された “1、2、さんくっすん!” がカッコイイかというと決してそんなことはない気がしますが(暴言)、 三本締めをやりたい人とやりたくない人がいて、やりたくない人がモヤモヤしてしまうよりは、みんなで納得した上で、現場ならではの挨拶で終われたほうがきっと楽しい という配慮だったのでしょう。

これは、借りモノだった三本締めをみんなで楽しく終わるための “自分のモノ” に変えた好例なんじゃないかと思っています。

あともう1つ、ここで言及しておきたいのは、一時期まとめ系ニュースサイトで取り上げられた “コール禁止” についての話です。

あくまでもわたし個人の視点での意見になりますが、楠田さん本人は “一律にコール禁止” とは1度もおっしゃっていない と思います。

“この曲はしっとりと聴きたい”という一定数のファンの声を聞いた上で、曲によっては、咲きクラップなどの明らかに声に被せるたぐいのコールはない方が嬉しいこともあるというだけの、あくまでも限定的な意見なんじゃないでしょうか。

事実、 Next Brilliant Wave ライブツアーでは 静かめの曲はコールなしで静かに楽しむ 一方で、 ラブリージーニアス では “好きにコールしていいよ!” という本人からの許諾があったこともあり、それはもう 活き活きとコールを叫ぶファンの姿 がありました。

また、細かいところでは、楽曲ごとのサイリウムの色なども、 楠田さん本人がこうしよう!と提案されることはあまりない ように思います。

Next Brilliant Wave のライブツアーが終わった後の本人のブログ記事には、こんな一節がありました。

誰か1人だけが楽しくてもダメだし、
誰か1人だけがつまらなくてもダメで
みんなで遊んで楽しい
そんなライブにしたかったので
少しだけ、私のこうしたいを伝えました。
(中略)
「くっすんのライブではこう楽しむ」
みたいなモノをみんなで一緒に創っていけたら良いなと思ってます!
今までの常識ではなくて
なにか新しい「くっすん識」
みたいな?

First live tour|楠田亜衣奈オフィシャルブログ「くすくすくっすん」Powered by Ameba

天下り的に声優現場の「常識」を受け入れるわけではなく、楽しい空間を作るためにひとりひとりの意見を取り入れながら、もっともっと楽しいイベントを作っていきたい。

“借りモノ” を “自分のモノ” へと変えていく ―― いわば新しい概念を導入する柔軟さと、それを改善するPDCAサイクルが文化として根付いている、というのが楠田さんのソロ・プロジェクトに対する1つめのわたしの意見です。

双方向的なコミュニケーション

ライブに行くと時々感じることですが、 楠田さんは本当にびっくりするくらいファンのことを見ている ように思います。

たとえば、 イベント中にファンの人を見たりするんですか? という質問に対しては次のように答えています。

結構見ます、私。
そしたら『この人こんな風に笑うんだ』とか、『タオルを回すとこんな盛り上がりなんだ』って発見とか、リリイベも回を追うごとに一体感が高まっていく感じでこうやって完成されるんだ、もっと先を見たいって感じました。

リスアニ! 2016年5月号 Vol.25

ファンとの関係性を語るのならば、何よりもまず、 First Sweet WaveNext Brilliant Wave の2つのアルバムにおいて、 作品の核となる曲がファンを意識して書かれている ということに目を向ける必要があるでしょう。

First Sweet Wave のCメロにある、

あたらしい 懐かしい あたたかい 空の下で

というフレーズが、 くっすんサポーターと作る空間のことを暗示している のは、 First Sweet Wave リリース記念イベントの最後に本人の口から “コタエあわせ” があった通りですし、 POWER FOR LIFE の歌詞の中にも、

君の好きな人でいられる人が誇り

という、 くっすんサポーターからの声援に力強く答える一節 がありました。

また、 Infinite Memories にも、 ソロとしての活動ひとつひとつをアルバムの1ページにたとえるフレーズ がありました。

通常、ソロのライブという空間は、 声優さん1人に対してファンが数百人いるという、とてもコミュニケーションが成り立つとは思えない環境 です。 しかしながら、楠田さんがソロとしての楽曲を歌い、ファンがその声援に答えるとき、そこには何らかの 言葉を超えたコミュニケーションが成り立っているような気がする のです。

それは恐らく錯覚に違いないし、もしかしたら声優さんのイベントに足繁く通う人間は大抵同じようなことを考えているのかもしれませんが(笑)、でも、その錯覚を信じることなしにどうしてファンがファン足り得るのか? とも、ごく個人的にですが思うのです。

一方通行ではなくて、私からも皆さんに元気を与えられたらいいなといつも感じているので……。
皆さんとは今のような近い距離感のまま活動していけたら楽しいだろうなと思います。

声優グランプリ 2015年9月号

楠田さんはよく、イベントやライブで “遊ぶ” という表現を使われます。 *8

それがいつ頃から定番化したかはよく覚えていないのですが、個人的には、 楠田さんの現場ほどこの言葉が似合う声優さんのイベントはない のではないかと思います。

ファンは、お客さんとしてただ楽しませてもらうというわけではないし、演者さんも、一方的なエンターテイメントとして空間を作ろうとしているわけではありません。 お互いの歩み寄りによって、より楽しく、より遊べる空間を作ろうとする雰囲気 があるのだと思います。

人によっては、そうした部分を少し敷居が高いように感じられてしまうのかもしれません。 でも、逆に言えば、新しくファンになった方も含め、 誰もが楽しめるような空間であるために歩み寄りができる 場所なのではないかとも思います。

最初の頃は『どんなアーティストになりたいか』って質問があったんですけどいまいちピンと来てなくて、声優をめざしてこの業界に入ったので『アーティストってなんだろう?』って感じでした。
でもリリース・イベントやライブをやらせていただいて、ファンの方と同じ空間を共有できるのがとても楽しいなって。
一方通行じゃなくてお互いがお互いを想い合ってる関係を作れたのがうれしかったんです。

リスアニ! 2016年5月号 Vol.25

脈絡なく、これまでライブで何回も披露されてきた オーマイダーリン の話をしますが、

最高!この瞬間(とき)終わらせたりしないから

この “最高!” と歌うときのテンションの高さが本当に “最高!” のときがあり、そういうふとした瞬間に、 楠田さん本人がどうしようもなく楽しんでいること が伝わってきてしまいます。 ファンとしては、そんな姿を見たらもう楽しくなってしまいますよね。 個人的な経験談で言うと、 ラブリージーニアスの間奏で突然モンキーダンスが始まるとき も、本人がだいぶ楽しんでいるときだと思っています。

First Sweet Wave から Next Brilliant WaveNext Brilliant Wave から Eternal Precious Wave とプロジェクトが進行していく中で、最初はまっさらだった “アーティストとして歌う意味” も、徐々に変化してきたように思います。

もちろん、他の声優さんが自分の中にある世界観の表現だったり、音楽が好きだという気持ちからアーティスト活動をするのとは少し違うかもしれないけれど。 楠田さんにとってのそれは、この節で述べてきた “双方向的なコミュニケーション” にあったのでした。

私が歌う意味って何だろうって考えてきたんです。
でも、私の歌が聞きたいって言ってくださるファンの方が目の前にいて、その方々がライブなどですごく笑顔になって楽しんでくれている様子を見て、あぁ、このために私は歌を歌っているんだなぁ、って感じて。
だから私にとっての歌は、ファンの方たちとのコミュニケーションツールというか、同じ思いを共有できる表現の形なのかなと思ってます。

My Girl “VOICE ACTRESS EDITION” Vol.16

個人的な意見になってしまいますが、わたしは、 楠田さんのファンほど幸せなファンはいないのではないか と思っています。 演者の側からこれだけファンのことを考えてくれて、 コミュニケーション自体を"歌う意味"であるとまで言ってくれる

お互いに楽しい空間を作りたいと思っていても、思ったように物事が進まないことだっていつかはあるでしょう。 しかしそれさえも、 Infinite Memories の歌詞に包含されているように思いますし、もっと言えば、色々な事情で現場を離れてしまったとしても、きっと戻ってこれる場所があるのだと本人が述べられています。

現状を維持しようとする慣性に縛られすぎず、いまを楽しいと感じる気持ちを大切に思いながら前に進み続けること。 それが肯定されているというのが、楠田さんのソロ・プロジェクトに対する2つめのわたしの意見です。

Eternal Precious Waveのこと、これからのこと

「Next Brilliant Wave」東京公演の様子が収録された映像ソフト Eternal Precious Wave のリリース記念ライブが行われたのは、つい先日、11月のことでした。

こうやって文章に起こしてみてもやや意味不明で、一体何のイベントなんだよ(笑)と突っ込んでしまいたくなるような位置付けのイベントでしたが、蓋を開けてみれば、 Next Brilliant Wave のツアー公演ともまったく異なる、非常に完成度の高いライブが待っていました。

まずセットリストの順番からしてライブツアーとはまったく異なっていましたし、冒頭からEDMに合わせ ダンサー2名とのダンスステージで幕を開けたこと や、セットリストの最後が振り付きの magic だったことなど、今回のためにたくさん準備をしていたことがよく伝わってくる公演でした。

その Eternal Precious Wave リリース記念ライブの最後に発表されたのが、3rdアルバムの発売でした。 3rdアルバム「カレンダーのコイビト」 に関しては、既に本人の口から

今までとは少し違う雰囲気のアルバムになる
絶対にいいものになると思う

と次回作への自信を覗かせる発言がありました。

また、今後の活動に関しては、 Eternal Precious Wave リリース記念ライブ・大阪公演で次のようなMCがありました。

ソロ・デビューから1周年を迎え、少し欲が出てきました。
いつになるかまだわからないけど、ポップアップできる会場でライブをやりたい!
みんなから独り立ちして、ひとりで歩けるようになりたいと思います。

更に、 Next Brilliant Wave ライブツアーのMCで “わたしはここに立っています” と宣言したことに対し、

約束、ちゃんと守ったでしょ?

とちゃんと “指切りの約束” を裏切らなかったことを自慢げに誇る一幕もありました。

ちなみに、ポップアップのあるステージをやりたいというのは、ソロ・デビュー当初から雑誌のインタビュー等で語られていたことでした。

あと、ライブでポップアップ(ステージ下から跳び上がって登場する舞台演出)をしてみたい!
実はやったことがないんです。
それができる会場でライブをやりたいし、跳びたいんです!

Pick-up Voice 2015年11月号

“少し欲が出てきました” という言葉の意味は、恐らくこれからの活動の中で徐々に語られていくことになるかと思います。

しかし、前節で書いたような “双方向のコミュニケーション” ができる雰囲気を守りながら規模を拡大するという意味であるならば、それはきっと、前人未到のチャレンジになるのだろうと想像しています。

Eternal Precious Wave リリース記念ライブは、 “Waveシリーズ” の集大成となるイベントでした。 恐らく、3rdアルバム、「カレンダーのコイビト」は、 “Waveシリーズ” 以降のプロジェクトがどうなっていくのか? という問いに対するひとつの回答になるでしょう。

発売日である 来年2月1日、楠田さんの誕生日当日 を楽しみに待ちましょう。 現在発表されている情報を見る限り、きっと2017年2月からの12ヶ月が楽しくなるようなアルバムになるに違いありません。

おわりに

「コタエあわせ」と題し、楠田さんのソロ・プロジェクトへの雑感を書いてきました。 ここまで読んでくださった方が、少しでもアルバムやライブに興味を持ってくだされば、それ以上に嬉しいことはありません。

ここで強く言いたいのは、 ラブライブ!以外での楠田さんの姿を知らない方にこそ、楠田さんのソロ楽曲を聴いたり、ライブに足を運んだりしてもらいたい と言うことです。 それが、ラブライブ!Advent Calendarにこの記事を投稿しようと決めたキッカケでした。

もし1回聴いたり体験したりして、それでも合わないのであれば仕方ないと思います。 でも、もしファイナル以降の楠田さんに触れる機会がなかったのでしたら、是非この機会に、ソロ・プロジェクトを通じて成長した部分を見ていただきたいと思っています(何様だよって感じですね)。

個人的に、 楠田さんは思ったり伝えたいと思ったことを必ずしも全部口に出すタイプではない と思っています。 でも、口に出さないながらも、本当に大事なことに関しては、鋭く本質を掴んでいる方ではないかとも思っています。

最後に、μ'sのファイナルライブが終わった後の楠田さんのブログ記事から引用させてください。

私はきっと
ふとしたことで思い出します。
場所や音や匂いで…
 
ラブライブ!のこと。
μ'sのこと。
東條希のこと。
 
楽しかったこと、嬉しかったこと、辛かったこと苦しかったこと、ぜんぶ。
そして、きっと、幸せな気持ちになると思う。
 
そんな気持ちを、きっとこれから先、一生もらえる。

ラブライブ!μ's Final LoveLive!~μ’sic Forever♪♪♪♪♪♪♪♪♪|楠田亜衣奈オフィシャルブログ「くすくすくっすん」Powered by Ameba

今回の記事で、恐ろしく身勝手な文章を書いてしまったかもしれません。 恐ろしく上から目線な文章を書いてしまったかもしれません。 それでも、きっと何かをアウトプットすることでいい方向に変わることもあると信じたいのです。

まずは来年1月13日楠田亜衣奈さんが表紙の声優パラダイスR Vol.16が発売されます 。 続く来年2月1日には、 3rdアルバム「カレンダーのコイビト」が発売されます 。 何卒、何卒よろしくお願いいたします。

ウェルカム・フューチャー! (記事中で一切話題に挙がらなかったので、ここに書いておきます)

・・・

ラブライブ!Advent Calendar 2016、続く18日目(といってももう今日ですが)の担当は すみたくさん です。 どうぞよろしくお願いいたします!

Next Brilliant Wave(通常盤)(CD)

Next Brilliant Wave(通常盤)(CD)

ウェルカム・フューチャー

ウェルカム・フューチャー

声優パラダイスR vol.16(AKITA DXシリーズ)

声優パラダイスR vol.16(AKITA DXシリーズ)

*1:https://twitter.com/tondol/status/607356264180367361 を参照のこと。

*2:あまだむくんは内田彩さんの楽曲に関しても、Advent Calendar外で 熱い記事 を投稿されているので、是非ご一読ください。

*3:ototoyさんの記事 では、「音楽性や方向性の違い」が原因で実現しなかった、とあります。

*4:実は、 HO♡HOLIDAY の編曲をされているArmySlickさんも、元々E-girlsなどに楽曲提供をされていた方でした。楽曲制作陣のキャスティングが、楠田さんの希望を元にされていることは疑いがないと思います。VAPさんの力なのか、あるいは山田さんの人脈パワーなのか・・・?

*5:そのあたりを勘案すると、 Listen with のセットリストを見るのもなんとも楽しいです。

*6:余談ですが、アルバム発売日前後のフリーライブイベントでは、これ以降「喝入れ」が開催されるのが定番となりました。また、「喝入れ」の日に楠田さんやファンがカツカレーを食べるのも定番化しました。

*7:インストアイベント以外にも、このときは J-WAROS 2016 という当時の事務所主体のイベントでも楽曲の披露がありました。

*8:LiSAさんもよく 同様の表現をされるらしい ので、これも楠田さんが影響を受けて自分のイベントに取り入れた、という結果なのかもしれません。