沼津で船舶免許を取得した件
TL;DR
小型船舶免許は自動車免許よりも簡単に取れる
どうせなら好きな土地で取るのもありじゃない?
本記事は不要不急の遠出を推奨するものではありません。旅行等は国や自治体の要請をご確認の上、ご自身で慎重に実施可否を判断いただきますようお願いいたします。
はじめに
(注) 本筋とは関係ない上に長いので次の節まで読み飛ばしOK
Aqoursによる楽曲「Fantastic Departure」の歌詞に次の一節がある。
街を抜けたら 青い海が見えてくると
もう君は知ってるね ああ知ってる
たった2行の、何の変哲もない短いフレーズでしかないのに、不思議とそこに行った人だけが連想する景色がある。 沼津駅からルート414を南下し、トンネルを抜けた先の口野交差点を右折した瞬間に見える景色。
右側に広がる海と、海岸沿いに続いていく町並みを見ると、何度訪れても「ここから旅が始まるのだ」とワクワクした気持ちにさせられる。
ほかの海辺の街とどこが違うのか、と思われる向きもあるかもしれない。 しかし、2019年に環境省が取りまとめた水質調査によれば、沖縄の宮古島や石垣島に並ぶレベルで水質が良いとされているのが沼津市内の平沢・井田・大瀬などの海水浴場だ。
引用元 : ASCII.jp:水がきれいな海水浴場ランキング2019【全586ヵ所・完全版】
実際、砂の色が沖縄と違って黒っぽかったり、そもそも岩場だったりするので、エメラルドブルーの砂浜というわけにはいかない。 *1 しかしながら、よく晴れた日に淡島の岸壁から海を覗き込むと、その水の透明度に驚かされるし、水中できらめくソラスズメダイが目を楽しませてくれたりする。
東京からほど近く、これだけ綺麗な海を見られる土地も他にあまりないのではないか。
沼津周辺へ足を運ぶようになった理由はもちろん「ラブライブ!サンシャイン!!」の影響が大きいのだが、埼玉という海のない土地に生まれ育ったせいで、無意識のうちに海への憧憬のようなものがくすぶっていたこともあるのかもしれない。 渡辺曜という、とりわけ船や船乗りに憧れを抱くキャラクターの影響もあるのかもしれない。
そういうこともあり、自然な流れであわしまマリンパークの連絡船に乗ってみたり、千鳥観光汽船の運行する遊覧船に乗ってみたりしたのだが、それではだんだんと物足りなくなってきた。
やっぱり自分で船を運転してこそじゃない??
前置きが長くなったが、沼津で小型船舶免許1級を取得した話 をする。
小型船舶免許とは?
そもそも小型船舶とは、Wikipediaによれば、
小型船舶(こがたせんぱく)とは、船舶の区分の一種であり、総トン数20トン未満の船舶のうち [1]、 日本船舶(船舶法1条にいう日本船舶。以下同じ。)又は日本船舶以外の船舶(本邦の各港間又は湖、川若しくは港のみを航行する船舶に限る。)のことを指す。
とあり、おおよそ総トン数20トン以下 (あるいは全長24メートル以下) のモーターボートと考えて差し支えないと思われる。いわゆるプレジャーボートというものはだいたいこのカテゴリーに属する。
小型船舶免許とは、これら小型船舶を操船するのに必要な免許だ。 *2
分類としては1級、2級、特殊と3種類ある。このうち特殊は水上オートバイを操縦するのに必要な免許だ。また1級と2級は水上オートバイ以外の小型船舶を操縦するのに必要な免許で、航行できる範囲によって級が分かれている。当然、1級の方が航行範囲が広く、難易度も高い。
取るならどれがいいの?
自分で船を持ったりしない限り、どこかのマリーナでレンタルボートを利用することになるわけで、その場合、運航できる範囲はマリーナのルールで決められており、多くの場合湾内とその少し外側程度だ。
その場合、2級免許 (沿岸より5海里 ≒ 約9km) の制限内でおおよそ事足りるはずだから、1級免許を取得する必要性は薄いと思われる。 理性が残っているなら2級でも問題ないだろうし、川や陸の近くで遊ぶなら水上オートバイに乗れる特殊免許という選択肢もある。 *3
なおわたしの場合、その気になれば湾外に出ることもできるという可能性の大きさと、2級とそれほど変わらない免許取得費用に釣られ、正直勢いだけで1級のコースを申し込んだ。
ちなみに、1級で勉強することになる上級運航の科目は、海図にコンパスで図を書くような問題もあって勉強段階も正直楽しい。
海図を見たり、そこに作図したりするのめっちゃワクワクしません??
しないですか?? じゃあ2級でいいと思います。
沼津で船舶免許講習を申し込む方法
内浦近辺では沼津マリーナやヤマハマリーナ沼津などがあり、どちらでも船舶免許の講習コースが受けられる。
わたしの場合は、沼津マリーナに直接問い合わせ、小型船舶免許1級の講習を受けることにした。 同じコースを梅田海事事務所からも申し込むことができる。 いずれもインターネットから資料請求や申込みができるため、やる気のある人は問い合わせてみるとよいだろう。
沼津マリーナは淡島からほど近い江の浦地区にあり、モーターボートでマリーナを出ればすぐ淡島の近くまで行くことができる。
実技講習や本番の試験ではこの海域で操船することになるので、内浦付近をたっぷり走り回ることができる。 もちろん、探せばもっと安いスクールもあるのかもしれないし、滞在費のかからない地元で講習を受けるのも賢い選択だろう。
しかしながら、どうせ船舶免許を取るなら好きな海で取りたい、そうは思いませんか??
なおわたしの場合、「内浦の海を自分の操船で走りたい!」というのが大きなモチベーションだったし、免許を取りながらその目標を達成することができるわけで、そう考えたら12万って安くない!?!? と思い正直勢いだけで申し込んだ。 *4
船舶免許講習の流れ
上級学科を含む1級の場合、学科講習に2日、実技講習に1日、さらに試験本番で1日。合計4日間が必要だ。
わたしのように遠方から沼津に通って講習や試験を受ける場合は、交通費や滞在費も必要になる。 また、マリーナのアクセス的に行き帰りをバスで済ませようと思うと長い時間待たされることになるため、車もあった方がいいだろう。 わたしは今年7月に取ったばかりの免許とレンタカーを活用した。
学科講習日と試験日は毎月決まっているため、日程一覧を見て自分にとって都合のいい月を選べばいい。 また、実技講習日については講師と相談しながらかなり柔軟に設定することができる。 土日や有給が取れる日を指定すれば、会社に通いながら免許を取得することも難しくはないだろう。
ただし、講習も試験も朝9時前の集合となるため、遠方から参加する場合は前日に沼津に移動しておく必要があるかもしれない。 参考までに、わたしの場合のスケジュールを載せておく。
日付 | 時間 | 内容 |
---|---|---|
10/31 (土) | 09:00-17:00 | 学科講習1日目 |
11/1 (日) | 09:00-17:00 | 学科講習2日目 |
11/3 (火・祝) | 08:30-15:00 | 実技講習 |
11/18 (水) | 08:30-15:00 | 学科・実技試験 |
試験合格に必要な知識とスキル
海図を除けば、学科はほとんど暗記科目だ。 しかも各問ごとに試験問題集にある例題のどれかがそのまま出るとかいうクソゲーらしい。 冷静に考えれば知識無しで解ける問題も多いため、受験戦争を勝ち抜いてきた皆さんなら余裕なはず。 海図問題も楽しいし、ちゃんと勉強すれば解ける。
どちらかというと問題は実技だ。 船やエンジン安全装備の点検に始まり、前進・後進・変針などの基本操船、落水者救助や蛇行などの応用スキルも必要とされる。 もやい結び等、ヒモの結び方も何種類か覚える必要がある。 実技講習ではまったく自信が持てないため、試験当日はめちゃくちゃ緊張するし、全部を完璧にやろうとするとかなり難しい。 が、よっぽどのことがない限り実技は落ちないらしく、最低限周囲の確認だけ気を付ければよいという噂がある。
自動車は試験まで何週間も練習するのに、たった1日で実技の講習が終わるの無茶では? と全員思うはずだし、わたしも思った。 それでも受かる。
沼津特有の事情
人類全員が自動車免許を持っている前提で学科や実技の解説がなされがちだ。
たとえば、学科実技ともにエンジンに関する問題があるが、講習では車のエンジンとの差分で語られるため、そもそも車の免許を持っていなかったり、エンジンの仕組みに疎かったりすると流れに置いていかれることがある。 講師の方は親切なので、質問すればしっかり教えてくれるはずだが、若干土地柄を感じる部分だ。
前述したように、一応バスで通うことも可能な立地ながら、実際は時刻表の兼ね合いもあり自家用車やレンタカーを用意するのが無難。 また、講習や試験の日にはお昼休憩が1時間ほど与えられるが、歩いていける範囲にお店が皆無なため、そういう意味でも車はあった方がいい。 なお、車があったとしても飲食店が少ない、もしくは混雑しているため、ミニストップでの調達を覚悟する必要がある。
おわりに
そういうわけで、無事1級の小型船舶免許を取得することができた。
渡辺曜への道 (?) も一歩前進。
免許という結果も大事だが、個人的には好きな海域で講習や試験を受けられるだけでも大きな価値があったと思っている。 試験の休憩時間に海のステージさんへ行ってみかん狩りができるのは沼津だけ!
免許を取ること自体のハードルはそこまで高くないので、興味がある方には挑戦してみてほしいし、特に沼津で取得したいという方には色々アドバイスできるので、気になることがあればぜひ気軽に質問していただきたい。
冬は気温的に厳しいためすぐにというわけにはいかないが、近いうちにレンタルボートを利用して東京湾や駿河湾でのクルージングを試してみたいと思っている。
ところで、船舶免許やレンタルボートについて調べると、マジで免許を取る人の99.9%くらいが釣り目的っぽいので、そのうち沖釣りをやらなきゃいけない気がしているし、釣りを教えてくれる人をマジ募集しています。
こちらからは以上です。
*1:例外的に、平沢のらららサンビーチは白い砂を人工的に集めて作られたビーチであり、綺麗な海のイメージにも近い砂浜かもしれない。
*2:なお、前述のアワシマ13も船自体のクラスとしては小型船舶に属する。小型船舶免許だけで一般旅客を乗せることはできないが、この規模の船も操縦できると思うとすごい気がしてくるものだ。
*3:なお、1級でも機関海技士の資格を持った者が同乗しない限りは沿岸から100海里の航行制限が存在する。とはいえ100海里は約190kmなので、初心者からすれば実質無限みたいなものだ。
*4:なお、独学で船舶免許を取る方法もあるらしく、自動車免許に比べれば現実的だと言われている。興味のある人は調べてみてほしい。