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〈全日本・紀文豆乳飲料シリーズ「麦芽コーヒー」の500ミリリットルパックを扱う小売店が少ないことに遺憾の意を表明する会〉活動記録

楠田亜衣奈さんソロデビュー2周年に寄せて

はじめに

先日、いつものようにTwitterを観測していたところ、 声優オタクは演者のパーソナリティーありきで楽曲やトークを聞いてエモくなるからキモい みたいなツイートが流れてくることがあり、個人的に納得する部分がめっちゃありました。

このツイートにある通りで、キモ=オタクって純粋に楽曲だけでエモくなるわけじゃないんですよね。 そこに至るまでのコンテキストとか、それを歌っている人自身の言葉とか姿勢とか、そういうものを全部ひっくるめてエモくなったり好きになったりする。

じゃあ逆に、コンテキストなしでエモくなるのってどういう場面でしょうか?

アニクラでそれまで何も知らなかった曲をいきなり聞いてエモくなったら、それは純粋に楽曲の力でエモくなったって言えるのかもしれないですよね。 でも、そういう曲だってその後色々コンテキストを踏まえていったら、たぶんもっとエモくなるわけじゃないですか。 例に挙げるなら、僕にとっては 僕らは今のなかで はそういうタイプの楽曲だったんですよね。

アニクラで何回か流れてくる中で純粋にいい曲だなって思ったのが最初だったんですが、知り合いに薦められてアニメを見て、気づいたらラブライブ!自体にどっぷりハマっていて、最終的に自分の中でめちゃくちゃコンテキストの詰まった1曲になっていきました。

そもそも、アニソンとかキャラソンみたいなものって、 コンテキストを共有することで生まれる楽しさを前提に作られているんじゃないか と思ったりもします。 アニメとかを見ていて、1話ではまったくピンと来なかった主題歌が話数を経るにつれて自分の中でだんだん特別な曲になっていって、気づいたら大好きになっていたような経験、これを読んでいる皆さんにはありませんか?

同じようなことがアーティストの楽曲でも起こることがあります。

声優さんがソロデビューして、色々シングルやらアルバムやらを出して、数年後に憧れのホールの舞台とかにそのアーティストさんが立つようになったとしましょう。 そこで歌われたのがソロデビュー発表当時に歌われたいちばん初めの楽曲だったら、デビュー当初からちょくちょくイベントに参加していたオタクからしたらめっちゃエモいじゃないですか。

なんでこういう序文を書いているかというと、これから 楠田亜衣奈さんという声優アーティストさんの話をしようとしている からなんですね。

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楠田亜衣奈さんの2ndライブツアーの最終公演が8月10日にあったんですが、その会場が本人やファンにとっては悲願とも言える、中野サンプラザという過去最大規模のコンサートホールでした。 詳細はウェブに上がっている 各媒体のレポート をご覧いただくのがベストかと思いますが、これまでに出た全楽曲を全部歌い切るというライブ内容で。 そのセットリストの1曲目が、先述したようにソロデビュー発表当時に初披露された楽曲、 トドケ ミライ! という曲のアコースティックアレンジだったんですね。

端的に言って、 コンテキストで楽曲を聞いているようなキモ=オタクたちを全員殺すぞ という気概が感じられて大変よかったです。

わたしは無事死にましたが、参加された皆さんはどうでしたか?

楠田さんが2015年の10月にソロデビューされてから、1stミニアルバム「First Sweet Wave」、2ndアルバム「Next Brilliant Wave」、3rdアルバム「カレンダーのコイビト」と3枚のアルバムがリリースされました。 この3枚のアルバムをめぐる詳細なタイムラインについては 先日書いたクソ長い記事 を参照してもらえたらと思います。

アルバム3部作と今回のライブツアーで、ソロプロジェクトとしてのひとつの区切りが付いたんじゃないか、というのは自分の中でずっと考え続けていたことでした。

特に、3rdアルバムの表題曲 カレンダーのコイビト は、ある意味 "究極のやつ出ちゃったな" という感覚が個人的にありました。 究極のやつが出ちゃったせいで、正直言うと、2018年春に出ると言われている1stシングルの内容がまったくもって予想できていません。

そういった個人的な事情もあり、2ndライブツアーが無事大団円を迎え、演者もファンも一息付いているこのタイミングで、楠田さんのアルバム3部作についてまとめておきたいと思い、 Anniversary の日に記事を書くことにしました。

メインストーリーのこと

1stアルバムの表題曲 First Sweet Wave という曲は、 デビューのドキドキを恋愛に置換えて描かれた曲 だと当初から雑誌等のインタビューで言及されており、また、2ndアルバムの収録曲 Infinite MemoriesFirst Sweet Waveの歌詞の延長線上にある ということが同様にインタビューなどで語られていました。

この2曲に関しては、作詞・作曲・編曲に関しても完全に同じチーム(こだまさおりさん・山田貴弘さん・鈴木daichi秀行さん)で制作されているという共通項も存在しますね。

曲の歌詞に着目してみると、これから2人の関係性を始めるために一歩踏み出す内容の First Sweet Wave に対し、 Infinite Memories では "アルバムをめくっていく" という形でこれまでの2人の思い出を振り返る様子が描かれていました。

コタエあわせは あとまわしなの
キミへ踏み出せ! Sweet Step

First Sweet Wave

めくる めくる キミのアルバム 何ページ目から
いつも いつも となりに写る わたしがいる?

Infinite Memories

ソロデビューからの活動という文脈で歌詞を読み解くならば、1stミニアルバムが発売され楽曲がCDという形で広がっていく様子を 甘い波 にたとえていたり、楠田さんのアルバムCDが増えたことをフォトアルバムにたとえていたりとなかなかお洒落な歌詞の構成になっています。

一方で、ソロデビュー云々のコンテキストを一旦無かったことにしてこれらの歌詞を読み解こうとするならば、 First Sweet Wave で出会った恋人同士の関係性がだんだんと深まり、 Infinite Memories ではフォトアルバムを見ながら過去を振り返る様子が描かれている、という風に解釈できるでしょう。

この観点で2曲を対比してみると、そこにはざっくり言って 2つの要素: 時間の経過関係性の深化 があるように思います。 また、どちらの曲にも過去や現在だけでなく、 未来に言及している という共通点もあります。

明日変わりそうな 毎日で待ってて

First Sweet Wave

絶対最強の愛になる! はてしない未来ごと 約束しようね
...
共有できる毎日のなかで 待ち合わせしよう これからも

Infinite Memories

First Sweet Wave の歌詞で表現されているのは、主に今現在のドキドキした心情なのですが、Cメロではそれを補足する形で、不確実性の高い未来に言及するフレーズがありました。

一方 Infinite Memories では、過去の思い出を振り返りながら、これからの毎日も一緒に過ごしていこうという意思が強く表現されています。 この2曲の歌詞と時間軸の関係を図示すると、次のようになります。

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では、カレンダーのコイビトの歌詞を、ここまでの解釈に則って見ていくとどのようなことが言えるでしょうか。

早速引用しますが、1Aメロの次のフレーズではこれからの1年に言及しています。

想像して? 1年分の、記念日じゃない日も全部
まだ誰も知らない未来 まずはふたり占めしよう

一方、2Aメロではこれまでの1年に言及しています。

覚えてる? 1年前の、同じ日は何をしてたっけ
こんな今日に出会えてること あの頃のふたりにはヒミツ

この部分だけ見るならば、カレコイが言及する時間軸上のスコープは1年前から1年後ということになります。

しかし、ここで改めて考えたいのですが、この歌詞にある "今日" とは、歌詞の主人公たちにとってのどの時点のことなのでしょうか?

First Sweet WaveInfinite Memories は、関係が深化していく中のある時間軸上の1点での心境を歌う内容でした。 一方、 カレンダーのコイビト で歌われる歌詞は、2人の関係が続く限り、 人生のあらゆる時点で成り立つ内容になっている ように思われるのです。

また、 First Sweet WaveInfinite Memories は恋愛を描いたものとしても、ソロ活動におけるファンとの関係性を描いたものとしても読み取れる歌詞でしたが、 カレンダーのコイビト に関しては、後者の解釈はあまり似つかわしくないように思います。

この曲の歌詞で描かれている "ふたり" の関係性は重すぎて、もはや "コイビト" が家族になって一緒に過ごす何十年もの人生を描いた歌詞としてしか解釈できないと思っています。 ちょっと陳腐なフレーズになってしまうことを承知で言いますが、 カレンダーのコイビトって人生そのもの じゃないですか?

ここまでの解釈を、 First Sweet WaveInfinite Memories と同様に同一の時間軸に載せてみると下図のようになります。

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ここでわたしが主張したいのは、次の3点です。

  • First Sweet WaveInfinite Memoriesカレンダーのコイビト の3曲は、主人公である2人の関係性が深まっていく様子を描いた3部作として解釈することができる
  • First Sweet WaveInfinite Memories は、あるタイミングの主人公2人の心境を描いた歌詞になっている
  • カレンダーのコイビト の歌詞はある時点以降の任意のポイントで成立する内容になっているため、汎用的であり、実質人生

ところで、中野サンプラザ公演の直後に放送されたくす×くすハウスの第38回では、楠田さん本人からセットリストの順番について次のような言及がありました。

「First Sweet Wave」のあとに、ちょっとしばらくしてから「Infinite Memories」が来て
最終的に「カレンダーのコイビト」が入ってくるんすよ
その3つは絶対にこの順番じゃないと嫌だって決めていて

くす×くすHOUSE 第38回

こうした発言の裏にどういった解釈があるかは定かではないものの、楽曲に対して抱いているイメージという意味では、ここで書いたようなことと多少なりとも通じる部分があるのかもしれない・・・と思ったりもしました。

これを読んだ皆さんは カレンダーのコイビト ってなんだと思いますか?

サイドストーリーのこと

楠田さんのソロプロジェクトにおけるメインストーリーがやがてコイビトになる2人の人生を描いたものであったとするならば、サイドストーリーとはどのようなものでしょうか?

それは端的に言って、 "約束" というキーワードで繋がってきた、演者とファンの関係性だとわたしは思っています。

ここで、 "約束" という歌詞を含む楠田さんの曲を並べてみます。

はてしない未来ごと 約束しようね

Infinite Memories

次の約束まで成長しあう指切り

POWER FOR LIFE

全開ずっと Try×3 まだまだ止まらない約束

ウェルカム・フューチャー

来年もここで待ってるからね
約束しようね 輝く君の笑顔大好き

Anniversary

楠田さんのライブに参加されたことのある方ならご存知かと思いますが、POWER FOR LIFEやウェルカム・フューチャーには引用したフレーズのところで指切りをする振り付けがあります。 こうした振り付けがあることは、これらのフレーズを大切にステージを作り上げている証左ではないでしょうか。

また個人的に思い出されるのは、1stライブツアー「Next Brilliant Wave」の東京公演における次のような楠田さんのMCです。

みんなが環境の変化とかで、一度イベントから離れてしまうことがあるかもしれないけど、わたしはいつでも戻ってこれるように歌い続けます。
ふとしたときに帰ってこれるような、そんな場所を作りたいと思います。
わたしはここに立っています。

このときに宣言された "約束" は、およそ半年後の「Eternal Precisous Wave」記念ライブで果たされたのでした。

約束、ちゃんと守ったでしょ?

こうしたこれまでのコンテキストを振り返ると、 "約束" という言葉は単に歌詞によく含まれているフレーズという以上の意味があるような気がしてきます。

"約束" というキーワードこそないものの、個人的に昔からエモいと思っているのが First Sweet Wave のこのフレーズです。

明日変わりそうな 毎日で待ってて

ソロデビュー当時のリリイベ等で初めてライブでこのフレーズを聞いたときは、まだFSW以降のソロ活動がどのように進んでいくのかが分からない時期でした。 きっとこれから色々なことが変わっていくんだろうけど、まだ何もわからない、その不確実性がよく表れていた歌詞だったと思いますし、それを聞くファンとしての心情も同じだったんじゃないかと思っています。

あれから2年が経って、ソロデビュー当時の "明日" からだんだん毎日が変わっていったことを、今の僕らは知っているんですよね。 節目節目のライブで度々披露されながら、歌われる度に新たなコンテキストが生まれて、着実にその思いを増してきた、そんな曲になってきたような気がしています。

おわりに

今回のエントリーでは、 First Sweet WaveInfinite Memoriesカレンダーのコイビト という3つの楽曲に対し、ライブやイベントのコンテキスト抜きでもエモい曲なんだよ、というところを紹介してみました。 逆に、ライブやイベントのコンテキスト込みで言うなら、やっぱり "約束" というワードは外せないよね、という個人的な楠田亜衣奈さんのソロプロジェクトに対する思いも共有してみました。

なんだか取り留めのない内容になっていましたが、伝えたかったことの5%くらい伝わっていたら嬉しいです。 個人的には他の楽曲に対してもくすぶっている思いがあるので、その内うまく言語化できるようになったらお伝えできたらいいなと思います。

そんなわけで、本日は10月7日。 楠田亜衣奈さんのソロデビュー2周年 です。 VAPさんより中野公演で披露された トドケ ミライ! のアコースティックアレンジ音源 も配信されておりますので、ぜひぜひそちらもダウンロードしてみてください。 来年には1stシングルも発売されるということで、これからも色々な展開を見せてくれそうな楠田亜衣奈さんのソロプロジェクトをよろしくお願いいたします。

わたしからは以上です。