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人類は衰退しました (3) - 田中ロミオ

人類は衰退しました 3 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 3 (ガガガ文庫)

『いとまごいに、きたです』

人類は衰退しました」は、どせいさんちっくな妖精さんの挙動を楽しむシリーズだと思っていたのだけど、3巻に入って急激にSF度とシリアス度がアップ。妖精さんの可愛らしさに騙されて買い続けた甲斐があったというか、毎回こんな内容なら喜んでロミオ信者になってもいいとすら思った。シリアスな状況の中でも微妙に毒付いたコメントを忘れない主人公こと「わたし」に軽く惚れそう。

ページの大部分はシリーズ初となる長編「妖精さんの、おさとがえり」が占め、助手さんの作った絵本を忠実に文庫化した「『ティードラゴンと鉢植えの都市』」及び”定例の月間レポート”がおまけとして付属しているという体裁。相変わらず電波成分が多めではあるけれど、消費者金融にまみれた「あとがき」が脳を現実に戻してくれる嬉しい配慮もあるので、現実感覚を守るためにラノベやエロゲを遠ざけている人も安心して読むことができる。

物語の発端はユネスコ文化局長の推進する「ヒト・モニュメント」なる大規模計画で、「人類の文明の全てをモニュメントとしてデータ化すること」を目的に、かつての人類が作り上げた文明の調査が世界規模で行われる。シリーズの舞台であるクスノキの里からも主人公たちを含む調査隊が出発し、無口な助手さんと共に巨大な都市遺跡の内部調査が始まる。都市の内部で見事に遭難してみたり、スライム状の物体に襲われてみたりしながらも、いよいよシリーズの世界観と人類が衰退した原因が明らかになってくるという長編にふさわしいストーリー。

ヨコハマ買い出し紀行」を近未来の衰退とするならば、このシリーズの「衰退」は何千年も先の未来に起こった文明の大断絶を意味しているようで、妖精さんなどという激しくファンタジックなオブジェクトが出現している時点であまり期待していなかったSF成分がここぞとばかりに溢れまくる。あくまでもラノベなので、本当にSFを趣味としている人からみれば「ぬるい」内容なのかもしれないが、読書もろくにしない自分にとっては逆に間口の広さがありがたかった。久々に文句なしに楽しめたと言えそう。

というかですね(ここからネタバレ気味)

オレが手放しで本書を絶賛するのは、ほかならぬ猫耳ロボ子の登場によるところが大きい。たった3行あまりの、尻尾の端子をコンピュータに接続して画像を保存する程度の描写でしばらく幸せに浸れるオレって一体なんなんだろう! でも幸せ。あと3日ぐらいは生きられるって思う。学校みたいなストイックな場所で萌え成分を摂取したときの充実っぷりは何度体験しても不思議だ。

しかし、宇宙のロマンと猫耳ロボ子がこうも結び付けられるとは思わなかったなあ。あらゆる機械に意識が存在していたのなら、という仮定はまさしく擬娘化の根底にあるものだけれど、それを実際の現象と結びつけて説明しているのがおもしろかった。

どーでもいいことだが

新作の『流行の学園ラブコメを目指してみる(仮)』が普通のラノベっぽいタイトルに変わっていて残念だった。