いつかの記憶、あるいは願望のフラッシュバック
時折、既視感を覚えることがある。季節は決まって冬。脳裏に浮かぶのは暖かい風景。見えたものが幻想なのか、それとも現実なのかはよく分からない。一体何がそれを引き起こしているのかも分からない。ただ、そのイメージは冬の陽射しみたいに暖かくて、いつまでも浸っていたいと思わせるような甘さを併せ持っている。
オレはその感触に足を止めてみる。でもその瞬間、そこにあったはずのイメージは霧散し、ごった返す雑踏だけが現実に戻ってくる。あれはなんだったのかと自答しても、もうそこに答えはない。いつだって、掴みたいものはすぐに手の中から逃げてしまうみたいに。
喩えるならば、遠い昔に帰り道で遭遇したコロッケの匂い。あるいは、自転車の後ろに女の子を乗せてみたい願望かもしれない。もしオレに絵が描けたなら、もっと直接的に伝えることもできたかもしれないけど。