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スカンジナビア号にP.S.の向こう側を見る

この記事は ラブライブ! Advent Calendar 2017 2日目 の記事として公開されました。前日の記事は oden さん沼津系プログラミング言語 ルビィ でした。

このブログの過去記事を掘り返したら、brainfxck で書いた fizzbuzz が転がっていたので、ルビィに翻訳したもの を記念に置いておきますね。ピギィ!


皆さんこんにちは。今日も目覚めたら違う朝でしたか?

突然ですが、この記事を読んでいる皆さんは スカンジナビア号 ってご存じですか?

スカンジナビア号

スカンジナビア(当時の船名は「ステラ・ポラリス」)は、1927年にスウェーデンで建造されたクルーズ客船 で、就航後発生した第二次世界大戦の混乱を生き延び、1969年頃に至るまで長らく富裕層向けの豪華客船として活躍しました。 その優雅な姿から 七つの海の白い女王 とも呼ばれ、甲板に屹立する2本の高いマストが印象的なその姿は、たくさんの人々に親しまれていたと言います。

f:id:tondol:20171126185445j:plain ファイル:Skandinavia20060831.jpg - Wikipedia (クリエイティブ・コモンズ 表示-継承ライセンス)

SOLAS条約の改訂によりクルーズ船としての就航が不可能になってからは、当時の西武グループ傘下の伊豆箱根鉄道が所有権を譲り受け、静岡県沼津市西浦木負767番地沖に停留、1970年から フローティングホテル・スカンジナビア としてホテル営業が開始されました。

ちなみに、この際ホテルの名前が「スカンジナビア」に変更されたのは、前の所有者であるクリッパーライン社との ステラ・ポラリスの名称継続使用を認めない」 という契約条件によります。

1970年のホテル営業開始から2005年の完全営業終了に至るまで、スカンジナビアは長井崎の西浦寄りに停留されていました。


この場所は、浦の星女学院のモデルとなった 長井崎中学校の所在する長井崎のすぐ側 であり、仮にスカンジナビアの営業が今も続いていたとしたら、ラブライブ!サンシャイン!!の作中でも重要なスポットになっていたことは間違いありません。

また、当時ホテル営業を行っていた西武グループ傘下の伊豆箱根鉄道は、ラッピングトレインでお馴染みの駿豆線伊豆・三津シーパラダイスを運営している企業でもあり、この点でもラブライブ!サンシャイン!!のファンにとっては馴染み深く感じられるのではないかと思います。

バブル景気終了後の消費低迷などもあり、船体維持にかかる膨大なコストを負担し続けることが難しくなった伊豆箱根鉄道は、2005年にスカンジナビアの営業を終了しました。

その後のスカンジナビアは、スウェーデンのペトロ・ファースト社に売却され、上海での改修を経て故郷のスウェーデンで再びホテル兼レストランとして営業される予定でしたが、曳航中の2006年9月2日に 和歌山県潮岬沖で沈没 し、その79年の歴史を終えました。

P.S.の向こう側

ところで、ユニット CYaRon! が歌う P.S.の向こう側 という曲があります。

www.youtube.com

かわいらしくも楽しくノれる CYaRon! らしさの詰まった楽曲ですが、改めて歌詞を読んでみると、いつ会えるかも分からない、遠くに行ってしまった友達への想いが切なくも綴られていることに気付きます。

「返事なんか要らないけど」 から始まるCメロのフレーズに、2nd ライブツアーで心を締め付けられた方も多いのではないでしょうか?

かくいうわたしもその内のひとりでした。

手紙を書く以上は、そこに想いを込める以上は、返事に期待しないなんてことはないはずだと思うのです。 もし何か一言でも相手から返事が届いたならば、飛び上がりたくなるくらいに嬉しくなってしまうに決まっているじゃないですか。 それでも、「ありがとう」と添えてポストカードをポストに投函する気持ちとは、いったいどんなものなのでしょうか? この歌詞を読んで、わたしは CYaRon! の3人に幸せになって欲しい 以外の感情がありません。

なお、「P.S.の向こう側」は、1期のブルーレイを全巻ゲーマーズで購入しないと手に入らないという入手難度の高い楽曲ではありますが、この曲に限らず ブルーレイ全巻購入特典曲はどれもマジでいい曲 なので、友達に借りるなり札束でゴリ押しするなりして、全国に1億人いるスクールアイドルファンの皆さんにマスト聞いていただきたいです。 *1

……そろそろのこの記事の目的が分からなくなっている頃かと思いますが、もう少しお付き合いください。 次はとある喫茶店を紹介します。

海のステージさん

海のステージさん は、前述のスカンジナビア号があった土地のすぐとなりで営業されている海沿いの喫茶店です。 サンシャインウォーカーが発売された際、このお店のテラス席が表紙のイラストに採用されたり、Aqoursのキャストがロケで訪れたり していたため、その関係で知っていたり、行ったことがあるという人も多いのではないでしょうか?

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海のステージさんはテラス席で海を眺めながらミルクティーをいただいたりできる素敵なお店ですが、以前はサンシャインの聖地というよりも、スカンジナビア号ゆかりの喫茶店として知られている場所でした。

店舗を訪れると店内の奥の方のスペースにスカンジナビア号ゆかりの品や記念品が大量に展示されており、お店のご主人にスカンジナビア号について尋ねてみると 1を訊くだけで100を教えてくれる という具合で、博物館的な楽しみ方をできるお店でもあります。

わたしはちょうど2ndライブツアーの埼玉公演直前に伺ったのですが、お店を出発する直前まで、スカンジナビア号にまつわるありとあらゆる資料を紹介してくださいました。

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個人的には、わたしがまだ小学生だった頃に家族で内浦のあたりを訪れた際、まだ営業中だったスカンジナビア号の名前を見聞きしていたため、聖地巡礼のつもりで海のステージさんを訪れた際に、聞き覚えのある「スカンジナビア号」の展示がたくさんあることにとても驚かされました。

スカンジナビア号とP.S.の向こう側

本題に入ります。

ここからは完全に個人的なイメージの連想になってしまうのですが、「P.S.の向こう側」を初めて聴いた際に脳裏に浮かんだのは、あのサンシャインウォーカーの表紙同様、海のステージさんで冷たくなった紅茶を飲んでいる CYaRon! 3 人の様子でした。

理由は直感としか言いようがないのですが、CYaRon! が遠くに行ってしまった誰かを想いながら紅茶を飲むとするならば、もっともその様子が「画」になる場所は 海のステージさんのテラス席以外にない と思ったからです。

ここで、「P.S.の向こう側」の歌詞を引用しながら考えてみたいと思うのですが、この曲で歌われている想い人の行方を想像するにつれ、なんだか スカンジナビア号にびっくりするほどその境遇が似ている のではないかと思うのです。


離れて (Oh no!)
しまうなんてありえないことだよと
笑ってたね


スカンジナビア号は、あのあたりで幼少期を過ごしたAqoursのメンバーにとってはいつも当然のようにそこにある存在であったはずで、それがある日急になくなってしまい、どこか遠くに行ってしまったことになります。 CYaRon! の 3 人が遠くへ旅立った大切な人のことを想い、海辺で水平線の向こうを見つめるときの目線の高さは、ぼくらが海の向こうに去っていったスカンジナビア号を想うときの目線の高さと近しいのではないでしょうか。


返事なんかいらないけど
楽しかった季節 (I need you)
最後にひとこと オマケみたいに
伝えておこう (p.s.)
「どうもありがとう」


どこで何をしているかもわからないけれど、ふと何でもない拍子に楽しかった日々のことを思い出してしまったり、返ってくるはずもない手紙を書いてみて、あまつさえ追伸にお礼の言葉を重ねてしまったりする。 そんな ″誰か″ に対する気持ちが、なんとなく スカンジナビア号が辿った境遇にリンクしてくる 気がするのはわたしだけでしょうか?

ここで、もうひとつ触れておきたいのは、渡辺曜という女の子のパーソナリティについてです。

f:id:tondol:20171126183758p:plain ラブライブ!サンシャイン!! 第10話「シャイ煮はじめました!」

渡辺さんは、これまでの描かれ方を見ていても分かるとおり大層なパパっ子で、船乗りとして遠い海の上で働いているであろうお父さんへの気持ちが作中の随所で溢れているように思います。 もっともそのパーソナリティがよく出ていると感じられるのは、やはりシャイ煮回の 「パパが教わった船乗りカレーはなんにでも合うんだ」 のセリフではないでしょうか。

そんなお父さんへの想いが船、さらには制服への執着に表れているように思いますし、渡辺さんにとって船とは、「単に海沿いの街に住んでいるから身近である」という以上に特別な存在なのではないでしょうか?

f:id:tondol:20171126184834j:plain Aqours「未来の僕らは知ってるよ」ジャケット (赤丸部分は筆者加工)

渡辺さんのトレードマークである錨(いかり)は、スカンジナビア号を長らく内浦の地につなぎ止めていた錨 に通じるのかもしれませんし、渡辺さん持ち前の人当たりのよさで誰かと誰かをつなぎ止める絆――つまりは人間関係のアンカーポイント――そんなところに通じているのかもしれませんね。 *2

おわりに

そんなこんなで、妄想多めで「P.S.の向こう側」とスカンジナビア号について書かせていただきました。 個人的には、劇中でもそんな渡辺さんの船に対する気持ちだったり、スカンジナビア号の思い出だったりに触れる回があっても悪くないんじゃないかと思っています。

沼津や内浦の風景を知った上で聞いてみると、ラブライブ!サンシャイン!!の楽曲には沼津らしさ、内浦らしさがたくさん詰まっている ことに気付かされます。 皆さんも是非内浦を歩いてみて、これまでにないサンシャイン楽曲の聴き方 を発見してみてください。

明日の担当は @mtane0412 さん です。よろしくお願いします!!


P.S. ここまで読んでいただきありがとうございました。 *3

参考リンク

*1:なんというか、ラブライブ!というプロジェクトの根幹は楽曲だと信じているので、こういう人に薦めづらい楽曲の収録方法は正直なんとかして欲しいという気持ちです。 2nd ライブツアーの映像ソフトが発売されればもう少し紹介しやすくなるとは思うのですが…… 最初のリリースからしばらくしたらベストアルバムに収録してくれるとかだと非常に嬉しいのですが、商業的にやはり難しいのでしょうか。辛いですね。

*2:文章をあらかた書き終えてから、曜ちゃんのシンボルマークが錨ではなく船のマークだと気づいたのですが、「P.S.の向こう側」も含め、衣装やVJなどに錨のマークがよく出てくることは事実なので勘弁して欲しいという気持ちでおります。

*3:「P.S.の向こう側」のコーレスに「ありがとう」があるせいでよく『P.S.ありがとう』と言い間違えてしまいがちなのですが、奇しくもこの記事をアップした12/2はPileさんの武道館公演の日でもあります。現地参加予定なので楽しみです。