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〈全日本・紀文豆乳飲料シリーズ「麦芽コーヒー」の500ミリリットルパックを扱う小売店が少ないことに遺憾の意を表明する会〉活動記録

〜楠田亜衣奈さん〜 東京2018冬

この記事は ラブライブ! Advent Calendar 7日目の記事です。

目次

はじめに

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2年前、bpm による 舞台『ESORA』 を観劇したのですが、冒頭でロシュ・フーコー箴言集から引用された次の一節が印象に残っています。

希望 は、頼りにならないものでありながら、それでも、人生の終着点まで、楽しい路を経て我々を連れていくことにおいて、少なくとも役に立つものだ。

ここで登場する "希望" という単語は、日常の中に登場するには若干大げさすぎるように思われ、個人的には次のように置換えてみるとしっくりくる感触があります。

音楽 は、頼りにならないものでありながら、それでも、人生の終着点まで、楽しい路を経て我々を連れていくことにおいて、少なくとも役に立つものだ。

アーティストが歌う楽曲に対して、「聞くと元気が出る」とか、「励まされる」とか、「落ち込んだときに救われる」とか、よく言うじゃないですか。

個人的には 『それって本当か?』 と思うんです。

本当に落ち込んでいるときや、とてもショックな出来事があったときに音楽を聞きますか? それで触発されて元気になったりしますか?

いやそんなことないだろう、と思うんです。 音楽、マジでアテにならない。 本当に必要なときはさっぱり役に立たない。

それでも、ですよ。

お酒が入ったときとか、一人じゃさみしい帰り道とか、ここぞというタイミングで遊びに行ったライブとか、音楽があってよかったと思える瞬間が数え切れないほどあるのもまた事実だと思っています。

頼りにはならないものの、少なくとも役に立つものではある。 本当にそう思います。

* * *

そんな導入から始まる記事で言及するのも若干申し訳ない気持ちがあるのですが、この記事では 最近の楠田亜衣奈さんのアーティスト活動 に焦点を当てたいと思います。

ソロデビュー前後から1年半ほどの活動内容については以前書いたクソ長い記事 楠田亜衣奈さんのソロ・プロジェクトを振り返る〜2年目のコタエあわせ〜 をご覧ください。

3rdアルバム表題曲の『カレンダーのコイビト』の考察についてはソロデビュー2周年のタイミングで公開した 楠田亜衣奈さんソロデビュー2周年に寄せて をご覧ください。

今回の記事では、これまでの2つの記事では語られていない、 3rdアルバム「カレンダーのコイビト」以降の活動内容 について紹介したいと思っています。

タイムライン

年の瀬なので、まずはいくつかのイベントやリリースを取り上げながら、2018年の出来事を簡単に振り返っていきます。

さんくっすんBIRTHDAY 2018

前回の記事では2017年のハイライトでもあった2ndライブツアーのファイナル公演に触れたので、この記事では2018年最初に訪れた国民的イベント、2月1日の 『さんくっすんBIRTHDAY 2018 〜COLOR PALETTE SHOW〜』 から話を始めましょう。

2017年のバースデイイベントに引き続き、「ESORA」での共演者であるファーストサマーウイカさんや茶々さんこと笹岡幸司さんも出演されたこのイベントは、楠田さん演じる「カラフル王国」のプリンセスが悪い魔女・ブラックウイカに奪われた様々な色を歌の力で取り戻す、というコンセプトでした。

特に、演出の中で光ったのはイベントタイトルになぞらえた『カラーパレット』こと遠隔制御で一斉に色が変化する腕輪型のライト。 そして、終盤 「白も黒も立派なカラフル王国の一員」 と、悪役のブラックウイカを受け入れるクライマックス。

そんな演出から個人的に思い出されたのは、 『くっすんサンタがやってきた! 〜リルリルクリスマス in サンリオピューロランド〜』 *1 に参加した際、せっかくだからと見学した Miracle Gift Parade (ディズニーで言うエレクトリカルパレード的な催し) でした。

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カラーパレットとミラクルハートライト

Miracle Gift Parade では幼女先輩の皆様が「ミラクルハートライト」なる遠隔制御機能付きのハート型のライトを振るのですが、これは前述の「カラーパレット」のオマージュ元と言って間違いないでしょう。

パレードの終盤ではキティ先輩が 「光を見たくない、そんなときもあるよね」 と悪役である闇の女王たちに寄り添い、手を差し伸べます。これもまた、くっすん姫がブラックウイカに手を差し伸べるシーンと重なるように思われます。

自分たちと対立する相手とただ戦ったり倒したりするのではなく、その存在を認め、根底にある主張を理解しようと努力すること。 楠田亜衣奈さんの『COLOR PALETTE SHOW』と Miracle Gift Parade に共通するメッセージ ―― それは "ダイバーシティ (多様性) を尊重すること" に違いありません。

さらに付け加えるならば、ミュージカル映画「ヘアスプレー」の劇中歌「You Can't Stop The Beat」が登場シーンで使われたことも、このメッセージを強く示唆しているように感じられます。 *2

何が言いたいかというと、以前 「インプットをアウトプットに変えていくこと」 が楠田さんの持ち味であると評した通り、このバースデイイベントにおいても、楠田亜衣奈さんは 自らのインプットをリミックスし、誰よりも "らしい" パッケージで観客に新しい体験を届けてみせた 、ということです。

1stシングル「ハッピーシンキング!」

4月25日には、前述のバースデイイベントで初披露された 『ハッピーシンキング!』 が1stシングルという形で発売になりました。

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一度聞いていただければわかる通り、今までになくキャッチーな楽曲になっています。 もっと驚かされるのはリリックに散りばめられた 「The 楠田亜衣奈 feat. こだまさおり としか言いようのないパンチラインの数々です。

サビの歌詞をまるごと引用します。

しのごの言わずに迷わずハッピーシンキング
あとはたいていケセラセラ
ポジティブパンチで陽気が大賛成
はーわーゆー ふぁいんせんきゅー
協力ありがと キミとならオールOK◎

説明不要!! やばい!

ポジティブパンチとは? 陽気が賛成するとはどういうことか? なぜ日本人は英語で元気かどうかを聞かれると実際の調子に関わらず Fine と答えてしまうのか? 様々な問いが生まれては消え、意味を咀嚼しようとしても楠田さん楽曲史上最速とも言われる BPM で思考が流されていきます。

そんな歌詞について、本人はこう評しています。

「宣誓! 楠田亜衣奈はこれからこういう曲を歌っていきます!」という歌詞になっているのがうれしいんですよね

こだま「〈ぴーす!〉って言ってる楠田さんは絶対かわいい」 - Real Sound|リアルサウンド

そんな宣誓文からもう1フレーズ引用させてください。

半径目の前 責任持ち合って 万事解決

このフレーズから見えてくるのは、 半径目の前にいる相手や出来事に対して、優しくしたり思いやったりするだけでも世界は救われるはず ―― という、ともすればあまりにも性善説に寄った世界観。

個人的には、以前ライブのMCで「いろんな円がたくさん交わるところに同じ想いみたいなのがある」と語られていたように、この <半径目の前> というフレーズにどうしようもなく楠田さんの主張を感じるのです。

どうですか? 単にアッパーで楽しい気持ちになれるという以外にも、この曲から見えてくることがある気がしてきませんか?

4thミニアルバム「アイナンダ!」

2018年はとにかく密度の高い1年でした。

AINA YEAR と呼ばれた2017年がまるで序の口だったとでも言わんばかりに、シングル発売のわずか3ヶ月後、圧倒的スピード感で7月25日に発売された4thミニアルバム 『アイナンダ!』

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表題曲の「アイナンダ!」を筆頭に、 "今だから歌える愛の歌" をテーマに新曲が全部で7曲収録されました。 1stシングル B 面の「会いたいのでも言えないよ」に引き続き、インターネットに熱狂的ファンを多数抱えることで知られる 倉内達矢さん *3 が参加する楽曲が2曲収録 されたことも嬉しい悲鳴でした。

シングルの発売から3ヶ月でリリースされたこともあり、「正直制作時間が足りないんじゃないか?」 「VAP のスタッフさんの残業時間が心配」 などとファンの間で噂されたりもしましたが、フタを開けてみたらめっちゃいいアルバムだったんですよね。

第一印象のキャッチーさで言うなら、ある意味キャッチーであることを目的にしている「ハッピーシンキング!」に敵わない部分もあるでしょう。 アニソンらしさ、オタクが食いつく率の高さで言うなら、バカみたいに強い曲だらけだった「Next Brilliant Wave」 *4 に敵わない部分もあるでしょう。

しかしながら "アイ" をテーマに歌われた「アイナンダ!」収録の7曲の楽曲たちは、不思議と何度でも聞きたくなるような魅力を備えていることもまた事実だと思うのです。

PERFECT AINA YEAR に至るまでの時代をアーティスト活動の第1シーズンであるとするならば、 「ハッピーシンキング!」以降は第2シーズンである とわたしは主張します。仮にそうであるとするならば、「アイナンダ!」は第2シーズンが向かう先がはっきりと示されたアルバム、とも言えるでしょう。

特に驚かされたのは、以前と比べると 様々な面で楠田さんの意見が楽曲作りに反映されている ことです。 たとえば 『Smileプラス』 に関しては、インタビューで次のように語られています。

テーマは「愛は地球を救う」です(笑)。
(中略)
そこからイメージの説明を何度もやりとりして、最終的に、作曲を倉内さんにお願いしたいですと伝えて、イメージにピッタリの曲になりました。

楠田亜衣奈最新ミニアルバム『アイナンダ!』発売! 南條愛乃が作詞をした「you & ai」の歌詞に「なんちゃんの“愛”を感じました」【インタビュー】 | 超!アニメディア

自ら表現したいイメージがあって、そのイメージを具体化するために 作曲家さんを指名する楠田さん 。 これって僕らが元々想像していた以上に完全に「アーティスト」の姿そのものじゃないですか?

2018年は、「ハッピーシンキング!」や「アイナンダ!」のリリースを通じて、 楠田さんのアーティスト活動に対するスタンスの変化が明らかになってきた1年 でもありました。

雑感

今年参加したイベントやライブを通して、個人的に思ったことを説得力ゼロで書いていきます。

「やさしいヒカリ」のこと

(元の文章は自己検閲により削除されました。)

「プラチナデイズ」のこと

歌詞の解釈が変化した楽曲の話で言うなら、 『プラチナデイズ』 のことも印象に残っています。

一度聞いていただければすぐわかるのですが、「プラチナデイズ」はこれから結婚式を迎えようとする新婦さんをテーマにした楽曲です。

であるが故に、楠田さんもインタビューでは次のように語られています。

すごくいい曲でいい歌詞だけど、結婚した経験がないという点で、100%心底共感することができなくて(笑)。
そこは「きっとこういう気持ちになるのかな〜」という想像で歌っています。

イメージは愛の使者、楠田亜衣奈 7つの“愛のカタチ”音楽に : MusicVoice(ミュージックヴォイス)

わたしも当分結婚する機会はなさそう (なんなら一生なさそう) なので、 この曲は刺さらないだろうな、と最初は思っていました 。 楠田さんも「チップやヒメのことを思いながら歌っている」 *5 なんて当初は語っていて、正直いまいちピンと来ない曲でした。

ところが、3rdライブツアーの横浜公演のときに、楠田さんがあるフレーズを歌いながら 急に何かが "わかった" かのような表情をされていた んですね。

見つけて 手をのばして 選んでくれた奇跡
ずっとはなさないで

その優しげな表情を目にした瞬間に、急にそのフレーズの意味するところがわたしの頭の中にもスッと入ってきた気がしました。

楠田さんが今目の前で歌ってくれていること。 色々な選択があって、自分がその場所にいられていること。

もし違うルートを歩んでいたら、こんな日には辿り着かなかっただろうと思うと、それを <奇跡> と表現するのも悪くはない気がして、なんだか そこに至るまでのすべてに感謝したくなりました

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例によってオタクの錯覚なのですが、ライブ中に言葉を交わすでもなく、そんな気持ちを共有できた気がして嬉しかったんですよね。

それと同時に、 歌詞の一部分だけをピックアップして、自分の境遇を重ねたり共感したりする 、そういう楽曲の聞き方があるということを教えてもらったようにも思いました。

たとえば、「カレンダーのコイビト」については以前このように書きました。

この曲の歌詞で描かれている "ふたり" の関係性は重すぎて、もはや "コイビト" が家族になって一緒に過ごす何十年もの人生を描いた歌詞としてしか解釈できないと思っています。

歌詞全体で見るなら、「プラチナデイズ」も「カレンダーのコイビト」も、オタクが共感できるような歌詞にはなっていないと思います。

しかしながら、歌詞の一部分だけを切り取ることが許されるなら、色々な見方ができるんじゃないでしょうか。それこそ、 演者とファンの間の関係性をそこに重ねること だってできるのかもしれません。

楽曲の解釈は、時間が経過するに連れて変わっていくものである。 それを教えてくれた印象的な出来事でした。

歌う意味の変遷、心理的安全性

楠田さん本人が作詞された 『Anniversary』 (「カレンダーのコイビト」収録) という楽曲があるのですが、その中にこんなフレーズがあります。

これからもよろしくだよって 優しく笑った
君とこの手 繋いで歩いてく

そんなフレーズに重ねるように、ソロデビュー1周年の当時、楠田さんは "歌う意味" について次のように語られていました。

だから私にとっての歌は、ファンの方たちとのコミュニケーションツールというか、同じ思いを共有できる表現の形なのかなと思ってます。

一方で、カレンダーのコイビト以降、ソロ活動に対する思いは 「『Anniversary』を書いた当初から少しずつ変わってきた」 とも語られていました。 そんな気持ちの変化について、ハッキリとその形が見えてきたのが2018年の1年間の活動だったのかなと思っています。

ただファンと遊ぶためのツールというだけでなく、 自分のアイデアや世界観を音楽という形で表現し、パフォーマンスすること

特に「アイナンダ!」というミニアルバムは、そんな 本人の好きなものを表現する姿勢が強く表れたリリース だったように思います。

アニソン好きなかたの好みとは、ちょっと違ったジャンルの楽曲もあると思うんですけど、いまだったらファンのかたも「くっすんはこんなのが好きなんだな」って受け取ってくれると思ったんです。

楠田亜衣奈が歌う、7つの『愛』のかたち──『アイナンダ!』ハイレゾ配信開始! - OTOTOY

それは、これまでのイベントやライブで楠田さん本人の自信が付いてきたということもあるのでしょうし、様々な形のパフォーマンスをファンが高い熱量で受け止めてこれたから、という部分もあるのかもしれません。

人間は、すぐ怒られてしまったり、強く批判されてしまうような環境では、意見を言いたい気持ちよりも恐怖心の方が勝って、なかなか素直な発言ができなくなってしまうものです。

そこで、マネージメントの文脈では、率直な意見を引き出すためには 心理的安全性』 が重要であるとよく言われます。

発言の内容によって人格を否定されることがなく、建設的な議論ができるという前提があってこそ、本当に言いたいことや表現したいことが表現できる のではないでしょうか?

たとえば、楠田さんの今回のライブツアーでは、MC中に次のような一幕がありました。

楠田さん「今日は話どんどんそれてる……それてると思ったら『それてるよ!』って優しく言ってね」
(中略。しばらくトークが続く)
ファン「それてるよ!」
楠田さん「今のは全然それてないよ!」

世の中、オタクが言ったことには多少同調してあげるような演者さんが多いように思いますが、 楠田さんはオタクの言うことが違うと思ったときは容赦がない

逆に言うと、それだけ率直な意見を返しても怒ったりしないという信頼を勝ち得ているのかなと思ったりもします。

端的に言って、 楠田亜衣奈さんのライブには心理的安全性があります

今までは「ファンの方に楽しんでもらえたら一番だな」という気持ちでしたけど、「私の好きなものを詰め込みたい」って気持ちに変わってきましたね。

一年中くっすんと一緒! 楠田亜衣奈3rdアルバム『カレンダーのコイビト』リリース記念インタビュー! – リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

これまでの数年間に及ぶ積み重ねがあるからこそ、楠田さん側の気持ちも「わたしが好きなものを見てみてくれよ!」という風に変わってきたように思いますし、それこそが アーティスト・楠田亜衣奈さんの第1シーズンと第2シーズンにおける大きな違い だとわたしは主張します。

結局 "アイ" とは何だったのか?

結局、「アイナンダ!」というアルバムのテーマでもある "アイ" とは何だったのでしょうか?

3rdライブツアーのパンフレットでは、これまでの楽曲について次のような言葉がありました。

恋愛ソングも多いし、気づいたら愛でいっぱいですね (笑) 。
だから「くっすんって、どんな曲を歌うのかな?」と聞かれたときに、 (中略) 今はひとつの答えというか、ひとつの共通点を見つけたかなという気がしています。

その答えのひとつは、 『First Sweet Wave』→『Infinite Memories』→『カレンダーのコイビト』という流れで繋がってきた物語 だと思っています。

進展していく二人の物語として捉えた場合の解釈としては 以前の記事 に書いた通りですが、歌詞の一部をピックアップするならば、演者とファンの関係性が描かれていると捉えることもできるでしょう。

この3曲を仮に 『メインストーリー』 と呼ぶことにすると、「アイナンダ!」というアルバムが教えてくれるのは、 コイビトやパートナーとの関係性だけじゃない、様々な方向に伸びていく『スピンオフ』 だと考えています。

  • 故郷やそこに暮らす人々に対するアイを描いた 『ただいまを歌おう』
  • バレンタインデーや結婚式など、人生を彩るイベントをフィーチャーした 『Melty Valentine』や『プラチナデイズ』
  • かけがえのない友達と過ごす楽しい時間を描いた 『you & ai』
  • そして、平凡な毎日や、自分を取り巻く日常に対するアイを歌う 『Smileプラス』

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脳内にある「アイナンダ!」各楽曲のイメージ

コイビトやパートナー以外にも、身の回りにはきっと何人も大切な人がいて、そんな大切な人と過ごす時間があるからこそ、季節の移り変わりや日々のイベントが色づいて見える。

「アイナンダ!」の収録曲は必ずしもキャッチーな楽曲たちではないかもしれないけれど。けれども 日々に寄り添ってくれる優しい楽曲である が故に、ライブの中でそんな風に思いを馳せることができました。

* * *

そして、「アイナンダ!」というアルバムの中でも最も重要な1曲、それが 『アイ・アム』 です。

楠田さん本人よる歌詞の中には難しい言葉はまったく出てきませんし、表現もとにかくストレートですが、でもだからこそ 楠田さんにしか書けない世界観がある のだろうと思います。

誰もが恥ずかしい思い出を持っているでしょう。 目を覆いたくなるくらいの大きな失敗をしてしまった日だってあるでしょう。 今思い出すと枕に顔を埋めて足をバタバタしてしまうほどに痛い、中二病に満ちた若かりし日もあったかもしれません。

楠田さんがそれでも <私は私だ> と言い切ることができるのは、 いま自分がこの場所に辿り着けてよかったと、過去の道のりも含めて肯定できたから なんだろうなと思います。

過去に紅白歌合戦に出たこともあるような方ですし、そもそも昔からの夢をちゃんと実現している方なので、そりゃあそうだよなあとも思います。

ひるがえって自分はどうか。

そんなに人に胸を張れるような生き方はできていないし、つい最近も大きな失敗をしましたし、マジで落ち込む日もあります。 どちらかというと自己肯定力が低い方の人種であると思います。

それでも、「アイ・アム」という曲をライブで浴びていると、いまこの場所で楠田さんのライブに居られることに感謝したくなるし、 いまこの場所に居られるのだから、これまでの選択も致命的には間違っていはいないのかもしれない とウッカリ思ってしまいました。

どうしてそういう気持ちになれるのか、と言われると自分でもよくわからないのですが・・・

カウンセリングじゃないけれども、自己肯定感は大事ですし、 自己肯定感があるからこそ、他の物事に対する "アイ" みたいなものも生まれてくる ―― そう考えると、「アイナンダ!」の中に自分自身に言及する楽曲があることにとても納得がいくし、そういう楽曲があってくれてよかったなと思います。

* * *

最後に表題曲の 『アイナンダ!』 についてなのですが、この楽曲はこれまでに紹介してきた楽曲たち全体を包み込む、 "愛でいっぱいの環境そのもの" にあたる楽曲なのかもしれません。

それでいて、「First Sweet Wave」「Infinite Memories」「カレンダーのコイビト」に続くメインストーリーの最新作であるようにも感じられます。

ここがわたしの居場所だって 会うたび実感してる
だってこんなにしっくり来てる 説明つかない

たとえばこの辺とか、完全に楠田さんのイベントに行っているときの限界オタクの気持ちそのものですよね?

いつか未来に迷う時も 一緒なら怖くない
もっと無謀な選択だって できちゃいそうだよ

無謀な選択、どんどんしていきたくないですか?

2018年の楠田亜衣奈さんを何よりも体現する楽曲であるがために、ライブが続いた日々からしばらく経って、不思議といちばん恋しくなっている曲でもあるのかな、と思います。

おわりに

3rdライブツアーの某公演の前日のことになるのですが、プライベートで落ち込むようなことがあって、 「正直明日ライブに行く気になんてなれないな」 と思っていた日がありました。

それでも、せっかくチケットを持っているし、客席に穴を開けてしまうのも申し訳ないから、「今日は静かに見るだけにしよう」と思って会場に向かったんですね。

しかし、今回の「アイナンダ!」ツアーでは、「ただいまを歌おう」で客も振り付けをやらされるシーンがありました。しかも、ここで一緒にやる振り付けというのが 一昔の芸人のギャグみたいで一見めちゃくちゃダサい んです。 *6

そんな振りをやっていたら、だんだん落ち込んでいた自分が馬鹿らしくなってきてしまって、気づいたら RADWIMPS の歌詞じゃないけれども "自殺志願者" が一端の "幸福論者" に変わっていました。

もしそこまで考えてあの振り付けコーナーがあったんだとしたら、本当にすごいことじゃないですか? 冒頭で散々「音楽は頼りにならない」なんて書きましたが、こと楠田さんに関しては当てはまらないのかもしれない。

ちょっとだけ、そんな風に思いました。

* * *

2019年もまた楠田さんのバースデイイベントがあります。

特に名古屋の方がまだ全然チケット買えるようなので、 東京名古屋大阪に住んでいる人類は全員チケットを買いましょう

音源を聞いたことがないけど興味はある、という人は @tondol に申し出ていただければアルバムを配布します。

やっていきましょう。

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

*1:今でこそピューロランドでイベントを開催する声優さんも多くなりましたが、当時はまだ例も少なく、イベント発表時はかなりの衝撃がありました。皆さんは KAWAII FESTIVAL をご存知ですか?

*2:「ヘアスプレー」はアメリカに根付く人種差別をテーマにしたミュージカル作品です。

*3:「LONELIEST BABY」や「Shangri-La Shower」の作編曲、「WATER BLUE NEW WORLD」のストリングスアレンジなどで知られる。今回の記事で初めてラブライブ!っぽいワードが出てきましたね。

*4:今でもたまに「進化系HEROINE」を聞いて楽曲としての強さに驚かされることがあります。

*5:チップやヒメ、というのは楠田さんがペットとして飼っているワンちゃんの名前です。

*6:一体どんな振り付けなのか気になった方は、ぜひライブに行きましょう。