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砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない - 桜庭一樹

富士見書房から出ているハードカバーの方ではなく、元のライトノベルの方。

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

タイトルにもなっている『砂糖菓子』と『実弾』というキーワードが本書の全てを物語っていて、要約すると「やっぱり空想だけでは現実は倒せないよね」っていう話。世の中に溢れている『嘘』の代表として描かれていた担任の先生が、最後の最後で『本当のこと』を叫ぶシーンが印象的だった。あと、だいぶ恣意的な描かれ方ではあるけれども、ワイドショーの評論家の意見にすっかり洗脳されてしまっている母親の姿に見覚えがある人も多いはず。

『ぼくは人魚なんだ』と語る女の子を物語の主軸に置く時点でとんでもなくバランスの崩れた小説だなあと思ったんだけど、読みすすめていくうちにその奇妙なバランスに慣れてしまって、結末ではその痛い女の子の存在にも納得してしまった。この本の一番凄いところは、物語のベースとなっているこの奇妙なバランス感覚だろうと思う。ライトノベルの中でも薄い部類に入る本ではあるけれど、その原因は内容の薄さというよりはむしろ、無駄な展開が一切ないところにある。一巻完結で薄い割に充実した内容なので、通学途中の電車の中で読むにはちょうどいいかも。