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「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」

と言う訳で「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」をさいたま新都心まで観に行ってきた。あらすじやキャラクターはなんとなく知っていても、エヴァをまともに見たのはこれが初めて。だからこそ、新鮮な感動とともにこの映画を見られたことが嬉しい。個人的には、すべての国民*1はこの映画を観て日本の底力を実感すべきだと思う。正直、オレは制作スタッフに跪いて命乞いをしてもいい。それぐらいに、この映画との出会いは衝撃的だった。

第3新東京市

まず、とにかくオブジェクトというオブジェクトが、これ以上があるのかというぐらいに激しく描き込まれている。ヱヴァという世界をスクリーンの上に体現する背景、地面の底からせり上がる要塞・第3新東京市、ありとあらゆる制御機器のインターフェイス。すべてが完璧なまでにデザインされ、スクリーン上のしかるべき場所に並んでいる。ひとつの巨大なシステムが、密接に連動し組み合わさりながら動作するカタルシス。誰もが夢見る壮大な未来都市の姿がそこにある。

作品中で一番萌えまくったのは、やっぱり要塞都市と中央作戦室のインターフェイス。とりわけ、エヴァが射出されるときのワクワク感は凄かった。ジオフロントから地表へ通じる通路が次々に確保され、作戦室のディスプレイがライトアップされていく疾走感。そして直後、「EVA専用」と描かれた地上の路面に通路が出現し、エヴァがその巨大な体を現す。これ以上にカッコいい人型兵器の登場シーンは後にも先にも存在しないだろう。

この映画の恐ろしいところは、こういう「これ以上は考えられない最高点」が至る所に存在することだ。しかし、その感動を表現しようにも、オレが持ち合わせている語彙はあまりに少ない。要塞都市が戦闘モードに移行し、膨大な数の迎撃ビルがせり上がってくるあの感動をどうやって伝えたらいいんだろう。戦闘に関するすべての情報が、理路整然と視覚的に、しかしカッコよく表示されるあのインターフェイスをどう形容すればいいんだろう。やっぱり、これを伝えるにはやっぱり本編を観てもらうしかないと思う。

敵としての使徒

戦闘シーンでは、使徒の不気味さとエヴァ以外の兵器に対する圧倒的な強さが印象に残る。オレが見たフィクション史上1番と言ってもいい強さ。特に、青い正八面体(ラミエル)はその中でも圧倒的に恐ろしい。それまでの使徒の中でも異質な幾何学的なヴィジュアルと、攻撃を行うときの非現実的な変形、そして終始辺りに響く高周波のような泣き声などなど。使徒が死ぬときに周辺に降り注ぐ赤い血の表現も印象的だった。得体の知れない存在ではあっても、使徒もまた生物であることを強調しているのだろうか?

ジオフロントの地下で磔にされてた使徒?とかはよく理解できてないのでひとまずスルー。ただ、第3新東京市にやってくる使徒は地下のアレが目的だってことは把握した。

キャラクター雑感

旧作ではさんざんヘタレとか言われていたシンジの性格だけど、新作を見た限りではアニメや漫画に出てくる主人公の方が年齢に比べて大人びているのであって、別にシンジが普通よりも子供っぽいとかいう訳ではないと思った。確かに優柔不断で内向的なきらいはあるけれども、父の愛情が欲しいとか、自分の行動を評価してもらいたいとか思うのは当然のことだろう。個人的にはむしろ、レイの性格がよく掴めない。ゲンドウに対しては明らかに特別な感情があるようだけど、何故他人に対してああも無表情になるのか。ゲンドウのことを悪く言ったせいで、レイに平手打ちされてしまったシンジがちょっと可愛そうに思えたよ。それでいて、ヤシマ作戦の直前には急にフレンドリーになるし。でもプラグスーツがエロいから許す。

ミサトさんはオフのときは元気で適当なのに、緊急事態になると冷静にリーダーとして指示を出すという二面性が目立つ。普段は多少無理にでも元気に振舞おうとしているけれど、その内側には色々と重いものを抱えてることを思わせる描き方だ。NERVに入ったのもどうやら過去の不幸が原因のようだし。トウジとケンイチは今作では出番が少なかったけど、次回以降はきっと色々と活躍してくれるんだろう。結果2人がどうなるかは別として。

ヤシマ作戦

「序」のクライマックスである「ヤシマ作戦」は半端なく燃えた。ジオフロントの装甲板がじりじりとラミエルに貫かれ、本部到達まであと十数時間という状況下で、「ヤシマ」の名の元に日本の兵力を結集した作戦が開始される。ただひとつ確実に使徒に抗える手段である大口径陽電子砲を稼動させるため、全国から集められる超々高電圧送電設備と変圧用巨大トランス集団。日本中の灯りが消え、満天の星空の下、陽電子砲に結集される電力エネルギー。このシーンで作戦室のディスプレイに表示される送電ステータスがまた、とてつもなくカッコよかった。

日本全国でテキパキと作戦が遂行されていく場面は、シンプルながらも厚みのあるBGMも相まって、本当に観ていてドキドキした。作戦を指揮するミサトさんの声も素晴らしい。あんな声で「作戦開始」とか言われたら寝不足な早朝でも一発で起きられそう。また、作戦の前後で変わるシンジとレイの距離感も面白い。最後の「どんな顔をしたらいいか分からないの」〜「笑えばいいと思うよ」は各所で何度も見てきたけど、実際にアニメを観て初めて分かった、確かにこれは名言だ。

まとめ

まとめると、要はこの「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」という作品は(少なくともエヴァを初めて観る人にとっては)2007年制作の新作アニメ映画であり、前作のリメイクだと紹介するのは適さないということだ。これだけ綺麗な映像と、完璧とも言えるアクションを観て、誰がこの映画を昔のアニメのリメイクだと思うだろう?

恐ろしいことに、この映画は人を単なるアニメ好きにしてしまう。観客はただただスクリーンの中で繰り広げられる戦闘を固唾を呑んで見守るしかないのだ。オレは既に第二作の「破」、そして第三作・第四作の「急」「?」を観る運命を余儀なくされてしまった。次の映画が公開するまでの間、とりあえず旧テレビシリーズでも観て予習しておこうかな。

追記

そういえば、一緒に観に行った友達(テレビ版エヴァ観てた)は、シンジがまだ知らないはずのレイの過去を知っていることや、ゼーレの人類補完計画報告書の番号が前作とは異なっていることなどから、新劇場版全体がループ世界なのではないかと推測していた。だとすれば、新劇場版のラストは前作と全く違った新しいものになるんだろうか。もはや構想がでかすぎて何がなんだか分からない。

ニコニコで「◆」をタグ検索したらラミエル人気ありすぎでワロス。素晴らしい作品を生み出す作り手も凄いけれど、正八面体ですらも擬人化する受け手のパワーも別の意味で凄い。

*1:小さい子供が見たらトラウマになりそうだが